07/03の日記
20:04
『義理ですが、この子の親です』第一家 義父さんが帰ってきた
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※雲雀義母主で、大人風が義父になります※
※雲雀高校生設定※
※時間軸がめちゃくちゃになってます※
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キィーンと飛行機が飛び立つ音を背に、並盛空港から一人の男が現れた。
旅行にしろ仕事にしろ、何にしても少ないように思える荷物を手に、男はきょろきょろと周りを見回す。
背筋をぴんと伸ばし、踵をくっつけて佇んでいる女を見つけ、男の顔がぱっと明るくなった。
名前を呼びながら駆け寄り、男は女が名前を呼ぶ間もなく抱きすくめる。
長い空白を埋めるようにゆっくりと強く抱き締める男に、女も男の背に腕を回して抱き締めた。
何分間そうしていただろうか。
やがて男は女を放し、頬に流れる涙を指で拭ってやった。
女は照れ臭そうにはにかみ、お帰りなさいと言った。
男は小さく目を見開かせるとすぐに笑みを溢して言った。
「ただいま」
†
並盛高校、風紀委員会。
並高及び並盛町の風紀を正すことを主な活動としたのが、風紀委員だ。
その風紀委員の委員長は、当然の如く、もはや当たり前に雲雀恭弥が務めている。
風紀委員の仕事は数多く、違反者を罰する仕事もあれば書類の仕事もある。
違反者を罰する仕事は他の者にもやらせることができるが、
不良ばかりが集う風紀委員に書類を片付けられる者なんているはずがなく、これだけはいつも雲雀の仕事だった。
並盛町まで支配するためか、委員会とは関係のない書類まであり、そうなると当然仕事量はとてつもなく多くなる。
だからいつも雲雀は遅くまで残って仕事をしていくのだが、今日は違った。
「草壁、僕はもう帰るから後はよろしく頼むよ」
「え?今からお帰りになられるのですか?」
草壁がそう聞き返すのも無理はなかった。
なんせ今の時間は四時だ。
普段なら早くても六時な分、余計驚いたのだろう。
「同じことを言わさないでよ。そう言っただろ」
「は、はい。すみませんでした委員長」
「分かればいいんだよ」
「……あの、失礼ですが委員長。なぜまたこんな早くにご帰宅を…?」
「………。義母さんに今日は早く帰るように言われたからだよ。じゃあ僕は行くから」
お疲れ様でした!、と慌てて言う草壁の言葉が言い終わらない内に扉を閉めて、僕はバイクを停めてある場所まで寄り道もせずに向かった。
慣れたようにバイクに跨がり、エンジンをかけて家まで走る。
家につくまでの間、昼間に義母さんから送られてきたメールを思い出していた。
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恭弥、今日は早く帰ってきてくれないかしら?
ちょっと恭弥に用事があるの。
委員会が忙しいのは知ってるけど、今日はどうしても早めに帰ってきてほしいのよ。
大切な話もあるし、何より会わせたい人がいるから…。
そういう訳だから、お願いできないかしら?
返事は早めに頂戴ね。
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会わせたい人……ね。
なんだろう。
結婚でもするのかな。
今まで僕のことは考えなくていいからと義母さんのためを思って言ってきてたのに、何もなかったから。
やっとそういう気になったのかな。
僕が本当にまだ小さかった時に両親は死んだ。
そして、ほんの子供だった僕をどこが引き取るかの話しになり、親戚が親の財産目当てで必死に僕を引き取ろうと言い争っていた。
成長してから知ったが、父さんがそれなりにいい会社に勤めていたのもあって、財産は莫大なものだったらしい。
そんな醜い争いの中、引き取ってくれたのが義母さんだった。
財産は全て雲雀恭弥の物だと言って、僕を引き取ってくれた。
それからは、義母さんとその夫の義父さんと暮らすようになった。
いつの間にか義父さんはいなくなっていて、
小学生の時に不思議に思ったけど離婚したのかと理解して、それからはもう義父さんの話を振ることはしなくなった。
気にするほどのことでもなかったし、義母さんがいたから。
門を押し開けて自分家の敷地に入り、玄関に入る。
するとそこには一足、男物の靴があった。
やっぱりそうか。
そう思いながら靴を脱いで床に足をつけ、義母さんと見知らぬ男がいるであろう居間に向かう。
義母さんの気配と……知らない気配が微かに感じられた。
部外者が自分の領域にいることにイライラしてきたが、それを抑えて僕は襖を開けた。
「ただいま」
「おや、お帰りなさい恭弥」
開いてすぐ視界に入ってきたのは随分と見慣れた顔で、僕は思わず目をぱちくりとさせた。
毎日見る自分自身の顔とよく似ていて、自然と眉間に皺が寄る僕とは逆に、目の前にいる男はただ緩やかに微笑んでいた。
「久しぶりですね。しばらく見ない内に随分と成長して―――」
「貴方、誰」
そう言った途端、男は笑顔のままピシリと硬直した。
「い、今…なんと……?」
「貴方、誰」
二回言ってやっと意味を理解したのか、男はそんな!と驚くことに僕の肩を掴んできた。
反射的に振り払おうとしたが、こんな細身でひ弱そうな男なのにびくともしない。
それどころか肩を掴む力がじわじわと強くなっていっている。
「わ、私を忘れてしまったのですか!?あんなに貴方をあやしていたのに!」
「は?何言ってるの。
僕は貴方なんか覚えてる以前に知らないしあやされた覚えだってない。人違いなら他所でやって」
「確かに恭弥はよく香苗になついていましたが、それでも……私を忘れるなんて…っ。
肩車をしたり抱っこまでしてたじゃないですか…!」
「だから知らないって言ってるだろ。名前呼びなんて馴れ馴れしいからやめてよ」
「恭弥は香苗の作るハンバーグや和食が好物で短気で、昔は聞き分けの悪く、口より先に手が出ていましたね……。
私はこんなにも恭弥のことを覚えているというのに……」
「知らないから。ていうか人の話を聞け」
学ランの下でトンファーの取っ手を掴み、咬み殺そうとトンファーを振るおうとしたら、タイミングがいいのか悪いのか義母さんが現れた。
先ほどまでキッチンにいたのか、エプロンをつけていて濡れた手をタオルで拭いている。
「あら、恭弥お帰りなさい。ごめんね。委員会あったのに」
「あぁ…、ただいま義母さん。それよりもこいつなんとかして」
「香苗、聞いてください!恭弥が私のことを覚えてないんです……」
「えっ、そうなの恭弥?」
知ってて当たり前のことのように義母さんまでそんなことを言うから、もう一度その男をよく見てみた。
……が、やはり見覚えはなくて、僕はうんと頷く。
すると男はしょんぼりとして、そうですよね……もう八年以上も前ですからね…、と呟き始めた。
「仕方ありません……。それでは自己紹介からしましょうか。
私の名前は風。香苗の夫で、恭弥、貴方の義父です。ちなみに恭弥を香苗と引き取ったのも私ですよ」
「……え。うそ」
《義父さんが帰ってきた》
(義父さん……?貴方が…?)
(ほ、本当に覚えてないんですね……。家を長く空けていた私にも非はありますが……)
(………)
(では恭弥。父親らしいことができなかった分、これからたくさん思い出を作っていきましょうね)
(やだ)
(そう言わずに。思い出とは、その時は嫌でも年が経つにつれていいものになってきます。
昔の記憶を思い出して浸るのも割といいものですし、やはり楽しい出来事があると人間幸せですから―――(くどくど))
(……。(そういえば、こんな義父さんいた気がしないでもないな…))
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=あとがき=
雲雀義理家族なお話!
ただ単に、風が父親なのを書きたかっただけという。←
風が雲雀の親戚筋で、葬儀に参加していたところ親戚の醜い争いを目撃。
香苗さんに引き取らないかと相談してみれば二つ返事でオーケーされ、風は他の親戚方の説得にあたったという裏話。
忘れられてしょんぼりする風は、大人姿でも可愛いだろうな…。←
最近突発ネタがあまり思い浮かばなくなってたんで、久しぶりの小ネタですね本当……。
それにしても、原作の風と雲雀の関係がすごく気になります…!
コミックのハルハルインタビューを見ると、何やら関係があるみたいですし……。
気になる……っすごい気になる…!!
実は血縁者なのか師匠なのか、はたまたその他違う関係なのか……。
いつか明かされるといいな…。
それではここまで読んでくださりありがとうございました!
ではでは、失礼させていただきます!
☆コメント☆
[白雪] 07-09 21:20 削除
なんか凄く面白そうです♪
是非続きが読みたいです(^^)
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