太陽と月の恋物語

□第十一話
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「あれ、杏は?」

昼飯を食べに広間に入ると杏がいなかった。
広間に居るのは昼飯の準備で忙しそうな千鶴とそれを手伝う左之さん、それから腹の虫と格闘中の新八っつぁんだ。


「巡察に行ってるんじゃなかった?」
「おわっ!?」

背後からいきなり声がしたと思ったらそこには総司がいた。
その隣には一君も一緒だ。


「でもあいついつも俺より来るの早いんだぜ?」

いつもは逆に俺を呼びに来るくらいだ。


「巡察中に何か事件があったんじゃないのか?」
「あ、そっか。そうだよな、うん」

一君の尤もな意見に納得していると隣にいた総司が心なしかニヤニヤしているようで。


「…なんだよ」
「いや、別に?平助が杏ちゃんの事気にしてるとかこれっぽっちも思ってないから安心してよ」
「っ!?」
「あ、赤くなった」
「べっ、べべべ別に気にしてなんかっ…!!」
「はいはい、そういう事にしておいてあげるよ」

面白いなぁ、と言い残して総司は次の標的である千鶴の方へと向かっていった。


「面白い……?待て待て、面白いってどーいう事だあぁっ!!」



***


『ふぇっくしゅっ!』
「大丈夫ですか、組長」
「子供助けたはいいですけど、風邪引いちゃってるじゃないですか」
『風邪なんか引いてな…っくしゅん!』
「いや、すでに風邪の初期症状出てますけど」
『いや、これはアレだから。誰かが僕の噂をしてるせいだから』
「あー、はいはい。どうでもいいですけどそのままだとほんとに風邪引きますよ?」
『た、確かに…。それは困るな!
よし、皆で屯所まで走るか、競争するか』
「え、ちょ…組長?」
「何でいきなりそうなるんですか、競走とか頭おかしいんですか?」
『うるさいうるさい!これも鍛練の一つだ!!行くぜ野郎共!ついて来い!!
僕の速さについて来れるかな?ふはははは!!!』


「「「やばい、あの人寒さで頭おかしくなってる…」」」




2011.1.14

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