太陽と月の恋物語

□第五話
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『ふぁ…眠い』
「でっけぇ欠伸。
ほんとにお前女かよ」

あぁ、まったく朝からうるさい奴が…
あたしは昨日の騒ぎのせいで寝不足だってのにこのやろー。
しかも目撃者の処遇について会議って…
あぁ、めんどくさい。土方さん達だけでしてくれればいいのに…


「まぁ、背は女か。
というか、その辺の女より低いよなー」
『うるさい!平助のばかやろー!!』

あたしは新選組で一番背が低い。
二番目に低い平助とだって頭一つ分違うくらいだ。
だから新選組にいる人を見上げるような形になるワケで。
毎日首が痛くてやってらんないよ、ちくしょう!


「悪ぃ悪ぃ、気にしてたんだっけ?」
『ぅ、左之さーん!平助がいじめるー!!』

近くにいた左之さんに泣きつく。


「おいおい、平助。
あんまり杏をいじめんなよー」
「なっ、俺はいじめてなんか…」
「てめぇら!うるせぇぞ!!
今から昨日の目撃者の処遇についての会議だ、ちったぁ静かにしやがれ」
『はーい、一番土方さんがうるさいと思いまーす』
「杏…てめっ」
「あはは、土方さん朝からそんなにイライラしないで下さいよー。
もう何て言うか…馬鹿みたいですよー」
「総司…てめぇまでっ……!!」
「まぁまぁトシ、源さんが例の子を呼んで来ているんだ。
喧嘩なんてしている場合じゃないだろう?」
「っ、分かってるよ」

近藤さんの言葉に土方さんはしぶしぶその場に座った。
しばらくして、井上さんと昨日の純粋っ子ちゃんが部屋にやって来た。
瞬間、さっきの空気とは一変、凍てつくような冷たい空気になる。


「おはよう。昨日はよく眠れた?」

にこにこ顔の総司が空気を読んでか読まずか口を開いた。


「…寝心地は、あんまり良くなかったです」
「ふうん…そうなんだ?
さっき僕が声をかけたときには君、全然起きてくれなかったけど…?」
『からかうのやめろよ、馬鹿総司』
「あっ、何でバラすのさ。ひどいなぁ」
「…ひどいのは沖田さんだと思いますけど……」
「…おい、てめぇら。
無駄口ばっかり叩いてんじゃねぇよ……」
『総司のせいじゃん。
僕だって早く会議始めてちゃっちゃと終わらせて寝たいよ』

とりあえず一人称を【あたし】から【僕】に変えておく。
これでも警戒してるからね、うん。


「おい、語尾に余計な言葉がついてんぞ」
『気にしない気にしない』
「てめっ…!!」
「でさ、土方さん。…そいつが目撃者?
ちっちゃいし細っこいなぁ…まだガキじゃん、こいつ」
「お前がガキとか言うなよ、平助」
『そうだそうだー!』
「お前も同い年だろが」
『関係ないね、精神年齢は平助のが下だ!』
「てんめっ!俺よりチビなくせに!!」
『なにおう!?』
「ま、世間様から見りゃ、
平助も杏もこいつも、似たようなもんだろ」
「うるさいなぁ、おじさん二人は黙ってなよ」
「ふざけんなよ、このお坊ちゃまが!
俺らにそんな口きいて良いと思ってんのか?」
『あ、そゆこと言っちゃう。
黙っててあげようと思ったけど言っちゃおうかなぁ、島原に行っ……』
「わー!!悪かった!俺が悪かったから言うな!!」

あたしを敵にまわしたらどうなるか、ちゃんと知ってもらわないとね。
いやぁ、人の弱みってのは役に立つもんだねぇ。


「…さて、本題に入ろう。
まずは改めて、昨晩に話を聞かせてくれるか」

しばらく雑談が続い後、近藤さんの言葉でやっと会議が始まった。



2010.09.12

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