太陽と月の恋物語

□第八話
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『千鶴ちゃーん!おはよー!!』
「あ、おはようございます紅桜さん」

にこり、と微笑む千鶴ちゃん。
だけど何かが足りないというか…


『うーぬ…』
「何してんだよ」
「あ、平助君。おはよう」
「おう。おはよ、千鶴」

ん?待て待て、平助君?千鶴?


『ぬああっ!それだぁ!!』
「んだよ、うるせぇな」
『千鶴ちゃん、紅桜さんとか堅苦しいよ!
今日から、というか今から杏でいいよ!!』
「え、あの…いいんですか?」
『うん、というか平助の事呼び捨てなのにあたしだけ名字とか嫌だし!』
「じ、じゃあ杏ちゃんで…」
『うん、これだ!やっぱこっちのがしっくりくる!!』
「朝からおめでたい奴だな、お前…」
『うるさいなぁ、馬鹿な平助よりマシでしょ。
あんたは一生馬鹿やってなよ、馬鹿平助』
「んだと!?てめっ…今から勝負だ!!」
『嫌だよ、朝から疲れたくない…のわぁっ!?』

急に体が宙に浮いたかと思うと平助に俵担ぎされていた。


『んにゃっ!?下ろせ馬鹿!!』
「さっきから馬鹿馬鹿うるせぇ!人の事何だと思ってんだよ!!」
『え、馬鹿?』
「てめっ…殺すマジで殺す!今から道場で勝負だ!!」
『は!?嫌だよ!お断りだよ!
ちょ、千鶴ちゃん助けてー!!』

距離が離れていく千鶴ちゃんに助けを求めるも千鶴ちゃんは苦笑い。
うおおー、誰か!誰でもいいから助けておくれーっ!!


「あ、おはようございます!
藤堂組長、紅桜組ちょ――!?」

道場に入った途端、朝稽古をしていた平隊士達が手を止めてこちらを向いた。
何かめっちゃびっくりしてるよ。
そりゃそうか、担がれてるもんねあたし。あああ、恥ずかしい!!
と、平隊士の中に一君と総司がいるのを発見!


『ちょっ、一君!総司!助けて!!』

***

無事、一君のおかげで助かりました。
だけどその後一君に正座させられてます、はい。
あぁ、平隊士に見られてるよ、くそう!全部平助のせいだ!!


「何故、このような事になった」
『あぁうん、話せば長くなるんだけど…って僕は何にも悪くないんだけど!?』
「本はと言えばお前のせいじゃん」
『にゃにおう!?』
「あ、噛んだ」
『う、うるさいな!
…おいこら笑うなよ総司!!』
「だって…にゃにおう!?って……ぶふっ」

ムカつく!そして平隊士達の視線が痛い!!


『………』

スパンッ、隣に正座させられている平助の頭を無言で勢いよく叩いてやった。


「痛ってぇ!何だよ急に!!」
『仕返し。あー、すっきりしたぁ!』

やられっぱなしはあたしの性分じゃないですからね。


「てめっ、杏!この野郎!!」
『ふぎゃっ!?馬鹿、髪の毛引っ張るな!!』
「痛ててて!お前も引っ張んなよ!!」

一君と総司と平隊士達の見る中また喧嘩。
くそう、女の子の髪の毛引っ張るとか、なんて奴だ!
髪は女の命だぞこのやろー!!


『大体、一君に怒られてるのだって平助のせいでしょー!?』
「本はと言えばお前が悪いんだろーが!」
『人を俵担ぎしたのはどこのどいつだよ!』
「誰だっけなぁ?」
『てめっ…殺す!!!』
「臨むところだ、かかってきやがれ!」

今にも剣を抜きそうなあたしと平助の肩を総司がつついた。


『何さ総司!』
「今忙しいんだよ!」

総司の方を振り向いた途端に二人の顔が凍りついた。
いや、正確には――


「お前達…平隊士が見ている中で……」

一君を見てですね、はい。
その場にいた人(総司を除いて)の顔が凍りついた。
にやにや笑う総司の後ろに黒いオーラのようなものを放つ一君。
いや、もうその顔が怖いのなんの…!!


「いい加減にしろ…!」

は、一君が爆発したああああぁああ!!

***
本気で怒ったときに怖いのは山南さんか一君だと思う。
土方さんはあんまり怖くないかと。
なんというか…怖い顔しすぎて見慣れてしまうというか。
普段大人しい人が怒ると怖いよ、うん。


2010.10.6

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