太陽と月の恋物語

□第十七話
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「ああぁっ!俺の魚!!」
「ふはははは、頂きぃっ!」

俺の夕飯の魚を馬鹿丸出しな笑い声とともにばりぼり骨ごと食べる新八っつぁん。
く、くそう…。


「何で俺のばっか狙うんだよ!」
「しょーがねぇだろ?一番身体が小せぇ杏がいねぇんだから次に小せぇ奴を狙うしかないだろう!」
「千鶴は!?」
「ぶぁっか野郎!俺の大事な妹分の飯を横取りするわけねぇだろ!!」
「なにその自己中心的な考え!」
「いいか平助、世の中は弱肉強食なんだよ!」

ぶぁっははは!と大声でゲラゲラ笑いだす新八っつぁん。
ああもう、この人駄目だ。馬鹿だ。根っからの馬鹿だ!


「いつもならここで土方さんの雷が落ちるんだけどな」

なんて左之さんが苦笑い。
そう、いつもならここで土方さんが「飯んときぐらい静かにできねぇのか!」って怒鳴るところだ。
でも今日は土方さんは大阪に出張中。
山南さんと杏もそれに同行で屯所にはいないってわけで。


少し、ほんの少しだけ、寂しいとか思ってみたりする。
ほんとに、すこーしだけだけどな!

なんて、考えていた時だった。
玄関の方から引き戸が開く音と源さんの声が聞こえてきた。


「紅桜君!?君はまだ大阪にいるんじゃ…」

驚きを隠せない源さんの声。
っていうか、今、紅桜って…?
考えるよりも先に俺は玄関へ走り出していた。




「何かあったのかい!?」
『説明は後で、先に近藤さんに…』

玄関には源さんと杏がいた。
しばらく声をかけられないまま二人のやりとりを見ていると、杏が足早に近藤さんの部屋の方へと向かって行った。


「…源さん、杏何て?」
「話は広間でしよう。皆にも伝える必要がある」

源さんの言葉に俺は無言で頷き二人で皆の待つ広間へと向かった。



2011.05.18

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