太陽と月の恋物語

□第二十話
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「あはは、すっかり嫌われちゃったみたいだね」
『笑い事じゃないけどねー…』

京の大通り、浅葱色の羽織を目にした京の人々は新選組を避けるように道端に寄っていく。


『こんなんじゃ鋼道さんのこと聞けないじゃんねぇ?千鶴ちゃん』
「ううん、そんな事ないよ!」

ぶんぶんと首を左右に振る千鶴ちゃん。
可愛いなぁもう!ぎゅってしたいよぎゅって!!


「それにしても、あの土方さんが君に外出許可を出すなんてね」
『半年も待たされたけどねー…。
あ、千鶴ちゃん。鋼道さんについて聞いておいでよ』
「うん!」

千鶴ちゃんは大きく頷いて近くの町人に声をかけに行った。
その時だった。


「貴様ら浪人か?主取りなら藩名を答えろ!」

新選組隊士の怒鳴り声が響き渡った。


「あーあ。よりにもよって、こんなところで騒ぎを起こすなんてね…!」

総司は素早く刀を構えて渦中へ飛び込んで行く。
周りにいた町人たちは悲鳴を上げて逃げ惑う。


『って…千鶴ちゃんは!?』

逃げ惑う町人たちの中から千鶴ちゃんを見つけてやっとの事で追いついた。
そこは裏通りで千鶴ちゃんと店主がなにやら話しているようだった。
っていうか…んん?
ここって枡屋…?枡屋ってあの古高を泳がせてる枡屋だよね!?


『っ、千鶴ちゃ――』
「き、喜右衛門さん!このガキ、さっきまで新選組の沖田と紅桜と一緒に居たぜ!?」
「なっ!?」

やっばい、バレてるよー!?


「新選組だと!?逃げろ!」
『ちょい待ち、逃がしたら僕が怒られる!』

ぐいっ、と逃げようとしていた男の肩を掴んだ。
そしてあたしの顔を見たその男は途端に顔を真っ青にした。
…全く失礼な奴だ。


『悪いけど、ちょっと眠っててもらうよ』

刀の柄で鳩尾を突くと男はすぐに気を失ってその場に倒れ込んだ。


「杏ちゃん!」
『遅れてごめんね千鶴ちゃん。まったく、総司の戦闘狂が…』
「僕がどうかした?」
『イイエナニモシテマセン』
「そう?まあいいや。…さて、どうしようか紅桜組長?」
『もう向こうさんにはバレちゃってるし、捕るしかないでしょ』
「みたいだね」
『あ、殺しちゃ駄目だからね。後で取り調べするから。
殺さずに、生かして一人残らず取り押さえること!いいね?』
「了解」

にやり、と笑みを浮かべて総司は一番組の隊士を引き連れて枡屋へ押し入った。


『千鶴ちゃん、あたしも今から行くから。安全のために少し離れててね』
「ぇ、あ…うん」

千鶴ちゃんが離れたのを確認してかた、抜刀する。
そして、


――枡屋へと飛び込んだ。




2011.06.04

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