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□一緒に帰ろう
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 舗装されたアスファルトが途切れて畦道へと変わる。少しぬかるんでいる土の道にためらいよりも好奇心が勝り、静雄は童心に帰った気分で始めの一歩を踏み出した。
 道に出来た轍の上を踏み締めるようにゆっくりと歩き出せば、静雄の心はますます躍った。靴を隔てて届く土の感触に笑みまでこぼれてしまう。
 田植えの季節なのだろう。見渡す限り水田が広がっていた。
 草の匂いが鼻をくすぐる。耳をすませば蛙の鳴き声が聞こえてきた。目に見えるものも目に見えないものも、春を待ち望んだすべての命がそこかしこで躍動していた。
 なんだか子供の頃、夏休みを利用して田舎のじいちゃんとばあちゃんの家に泊まりに行った時のことを思い出すな――静雄の脳裏に懐かしい記憶が蘇る。
 静雄は自分の力を恐れない、優しくて温かな祖父母が大好きだった。そんな祖父母と少しでも長く一緒にいたかったから静雄はよく二人を散歩に連れ出した。手を繋ぎ、歌を口ずさみながら畦道を時間をかけて歩き回った。嫌な顔一つせず、それどころか本当に嬉しそうな笑顔を浮かべる祖父母に静雄は泣きたくなるくらい幸せな気持ちでいっぱいになったのを今でも覚えている。
 大人になり、まとまった休みも取れなくなってしまい、今では電話での近況報告ばかりになってしまったけれども、落ち着いたら祖父母に会いに行こう。でも、連絡もなしにいきなり行ったら祖父母はどんな顔をするだろう。突然のことに驚くのは必至だ。でも、あの優しい笑顔で迎えてくれるのだ。
 きっと、いや、絶対に自分は泣くだろうな。そう、幸せ過ぎて。
 それが目に見えているから自分の考えが否定出来なかった。静雄は苦笑すると恥ずかしさをごまかすように頭をかいた。
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