短・中編
□しあわせの秘訣
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たとえば。
まるで引き合うように、振り返れば視線が絡んだりして。
そのまま、柔らかく微笑まれたりしたら、それはもう奇跡だ。
「はあ?何言ってんの?千秋、キモイ、サムイ、イタイ」
相変わらず、尚哉は全く容赦がない。
初めて「先生が好きなんだ」と打ち明けた時なんて、頭おかしいとまで言われた。
まあ、自分でも薄々気づいてるから、返す言葉もないんだけど。
こんな俺、全然俺らしくないし。
恋愛なんて、楽しくてなんぼだろ。
今までだって、そうやって女の子と付き合ってきたし、その考え方は変わらない。
ただ、今の恋には当て嵌まらないだけだ。
好きだなんて、もう数え切れないくらい言った。
同じ数だけ、フラれてる。
『お前をそういう意味で好きになる未来は、永久に無い』
なにもそこまで言わなくてもいいんじゃないの、なんて流石にめげそうにもなる。
楽しむ余裕なんて、蟻がはい出る隙間程もない。
先生の一言に一喜一憂する俺は、かなりダサいんだろうと思う。
でも、やっぱり、好きなんだから、しゃあねえじゃん。
たとえ先生には恋人がいたとしても。
「だいたい、不毛なんだよ。なんで男なんて好きになるわけ?全然、理解できないんだけど」
尚哉は不機嫌な顔のままで、弁当箱の蓋を閉じた。
こっそり忍び込んだ立入禁止の屋上だから、この話を聞く奴がいないとはいえ、一応声のトーンを下げてくれねえかな。
俺は思わず周りを見渡して、思い切り鼻で笑われた。
「誰もいないよ。そんなにビビるくらいなら、男なんて好きになるべきじゃないんじゃない?」
「バカ、先生に迷惑かかったら嫌だろ」