短・中編

□初恋の色
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     ◇

 ――初恋は何色なんだと、君は問う――

 昨日、何回も姉貴の部屋から流れてきた歌の歌詞が、耳について離れない。

 熱があった俺の頭には、それはもう酷くその音楽は響き渡って、うなされたくらいだ。

 やっと熱が下がって久しぶりの登校だっていうのに、俺はまだ痛む頭を抱えていた。

「よお小松、元気になったか?」

 長い坂道を登った先にある俺の通う高校は、家から10分くらいの所にある。

 その途中で俺に声をかけてくるのは、小学校から一緒の島崎くらいのものだった。

 痛む頭を抱えながら振り向くと、島崎は坊主頭を撫でながら俺の顔を見て笑った。

「どうよ、この頭」
「いや、びっくり」
「だろ?結構いいと思って」

 本気でびっくりだ。

 俺が熱で寝込んだ3日前は確かに普通に長めの髪だったのに。

 なんだって坊主に……。

「山田優子がさ、やっぱ野球部は坊主よねーとか言いやがるからさ、思い切ってみた」

 本当に思い切った事をする。

 一年二組山田優子は、島崎の片思いの相手で、島崎は何かと言えばその名前を口にするもんだから、俺だってその存在くらいは知っている。

「ちょっとでも高感度上がるなら、いいじゃんか?」

「そんなもんか?」

「片思いは辛いんですよ、旦那」

 ふざけた振りで島崎は俺の肩を叩き、俺はこっそりため息をついた。

 片思いは辛いらしいが、俺には共感してやる事はできない。
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