短・中編

□ウサギ屋 その後
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 目の前では、大きな目を益々大きく見開いて、形よい綺麗な唇を薄く開いた先輩が言葉を失っている。その恋人である長身の男は、部屋のドアにもたれたまま不機嫌そうだったけれど、今は軽く肩を震わせていた。
 さっきまでは、いつものように篠原と内海がゆっくりと話しをしながら、沢渡が機嫌悪げにしていたのだ。
 空気を変えてしまう質問を自分がしたという自覚はある篠原だが、沢渡が次の瞬間吹き出したのには納得がいかない。こちらは、真剣なのだ。
「笑う事ないじゃないか」
「いや、うん、悪い悪い、もう一回言ってくれない?」
 内海と篠原が仲がいいという事さえ気に入らないらしい男前は、いつも「敬語を使え」と内海に叱られているが、その事を忘れてしまっているようだった。
「だから、その」
 本当なら、人に相談する事すらはばかられるような問題だけれど、篠原一人ではもう解決できそうにないのだ。目の前では、綺麗な顔をした内海が、口元を手で押さえながら、ゆっくりと頷く。この人に促されればNOといえないのが篠原だ。
息を吸い込み、二度目の質問をぶつける。
「だから、その――男の人って、どうやって抱くんですか!」
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