**黒白の狭間**

□第七夜『再会』
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「・・・・・・。ココ登るの?」


「・・・あぁ」



ユアとラビが立っているのは、そうとうに険しい山道の入り口。

薄暗く、様々な植物が茂り、何が出ても不思議の無い状態。



「イノセンス使えばいいじゃん」


「“翔(フライ)”は一応第二開放だから、それなりに疲れるんだよ」


「“伸”使うか?」


「遠慮しとく」


「何で?」


「どこに突撃しても構わないっていう覚悟が無いならやめとけって室長が言ってた」







結果。

歩いて山道を登ることになった。









・・・・・・そして数分後。





「も・・・無理・・・っ」


「体力ねェな〜」


「こんなに歩いたの・・・何十年ぶりだろ・・・」


「お前、そんなに生きてねェさ」



体力の無いユアが座り込んだ。

いや、一般人よりは遥かにあるのだが、数時間道なき道を歩けば当然とも言える。


しかも目指すところはまだ遥か先だ。




「もう絶対無理・・・っ。歩けない」


「やっぱ“伸”使えばいいじゃん。早いし楽だし」


「着地不安定なんでしょーっ」


「ダイジョブダイジョブ。今回何かうまくいくような気ーするさ。
背に腹は代えらんねぇし」



そう言って、ラビは笑顔で槌の柄を差し出した。



「バランス崩さなきゃ落ちることもねぇよ」


「・・・分かった」



ユアは覚悟を決めて柄を握り締めた。


その瞬間、



「”伸”っ!!」


「わっ!!」



2人は一気に空へと飛び立った。


柄の角度はしばらくすると落ち着き、ユアは慎重に下を覗いてみた。



「わぁ〜・・・。さっきまであの辺にいたんだっけ・・・」


「こーしてみると結構歩いてんな」


「でしょ〜。私頑張ったほうだよ」


「おっ、アレじゃねェ? 目的地」


「あの村か〜。移動するホラーな村には見えないけどね」


「んじゃ、そろそろ降りっか」



ラビがそう言った瞬間、ユアはこっそりイノセンスを発動させていた。


そして着地の結果は・・・



ドーーーンッ ザザザッ バキッ


槌は、いくつかの枝をへし折ってから、地面にぶつかってようやく止まる。

ラビは葉っぱの山に埋もれた状態だった。



「っ痛〜! あーいてーっ。
ユア大丈夫か〜?」


「もちろん」



その声は、##NAME1##がいるはずの後ろからではなく、頭上から聞こえてきた。



「んぁ?」



ラビは上空を仰ぎ見る。

そこには、イノセンスの第二開放による風をまとったユアの姿があった。



「よっと。ってかユア、イノセンス使うとかずるいさ」


「あのまま地面とぶつかりたくなかったんだもん」



ユアは平然と答えた。



「それより行こーよ。せっかく早く着いたんだし」



ユアがそう言い、2人は村の入り口の前に立った。



「・・・一度入ったらそうそう簡単には出れねェな」


「どこに飛ばされるかわかんないしね・・・。とりあえずおかしな感じとかはしないけど」


「ココで見ててもどーにも何ねェな・・・。入ってみるしかないさ」


「よし・・・!」



覚悟を決め、足を踏み入れた。
















「・・・・・・・・・」
















「・・・なんも起こってない・・・?」


「多分・・・」



一応無事に入れたようだし、変な様子も無い。


そう思って、とりあえず入り口付近は後にして、村の中心部に行ってみることにした。



















―――ユアが気付くことは無かった。



















このとき既に再会する運命だったことに。











・・・ユアにとっては、嬉しくもあり、悲しくもある再会。





だって、もう戻れないから。



敵にしたくは無い。



それでも。



ユア自身は気付いていなかったけれど。



もう、人間をキライにはなれないから。


























「千年公、すっごく嬉しそぉ〜。見つけたの?」



フリフリとした服を着た可愛らしい少女が、ふくよかで、シルクハットをかぶる人物に話しかける。



「ええ。やっと見つけましたv―――ユア」


「ボクも嬉しいよぉ。
けどさ千年公、ユア以外にももう1人いるよ?
あれ、ブックマンだよね〜。どうするのぉ〜?」



そう言いながら、少女―――ロードは、怪しげな笑みを浮かべた。


まるで、答えはもう分かっている、というように。


千年公と呼ばれた方―――この聖戦の中心人物である千年伯爵もやはり、ロードと同じ笑みを浮かべていた。




「決まってますv」




誰もがぞっとするような恐ろしい顔、なおかつとても楽しそうな顔だった。



「ユアを惑わせるにっくきエクソシストは抹殺しなければv」




    
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