**黒白の狭間**

□第八夜『ガラス球』
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「奇怪の正体はレベル2のアクマの能力で、エクソシストをおびき出すためにしてた事?」


「ハイ」



ここは室長室。


ユアはにっこりと笑ってコムイに言葉を返す。



「でももう倒したから心配いらねェさ。帰りは何も起きなかったし」



ラビも同様に言う。



「そっか・・・イノセンスは無し、村人の正体は全員アクマだったって事でいいのかな?」


「オッケーだよ、室長。そんじゃね」



最後にそう言って、2人は室長室を後にした。






―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―

帰りの汽車の中。



「疲れたさ〜。そーいや結局イノセンスじゃなかったんだな」


「イノセンスだったら、帰り、教団の近くにでも飛ばしてもらえたかもしれないのにね」


「その意見には賛成」



ユアが窓の外を見ていると、ラビが言った。



「今回の報告、どうするんさ?」


「え?」


「奇怪の理由だよ。ユアの好きなようにどーぞ」


「・・・・・・いいの?」


「モチ。口は堅いから安心しろ」


「・・・了解。ちょっと見直した」


「お、マジ?」


「調子には乗るな。・・・じゃぁ―――」

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そして、冒頭のコムイへの報告へと繋がる。


ありのままを話す事はできない。

正直、ユアにはまだ、話せない事がある。

伯爵との繋がりの事。

それには多分ラビも気付いてる。




(だってJr.鋭いもんな〜)




「じゃーな、ユア」


「あ・・・・・・ちょっと待ってっ」


「ん?」



それぞれの自室へと帰る前、試しに一度、ユアはラビに言ってみた。



「Jr.・・・聞かないの?」


「・・・何を?」



まったく、何を? と思ってなさそうな顔でラビは笑う。



「・・・・・・・・・」



それは聞くつもりがないって事。



「何でもない」



これは、今は言いたくない事で。

でもいつかは言いたいとも思う事でもある。


この2つの気持ちは矛盾じゃない。







「ありがと」


「へ?」



ユアが今の気持ちを素直に伝えると、ラビは何故か間抜けな声を出す。



「何その声」


「や、だって・・・お前がそんな事言うと思わなかったから・・・」


「そんな事って・・・ι 別に私だって、言うときもあるよ。相手が別に好きじゃないヤツにだってね」


「な・・・っ!?」



ユアは背を向けながら言った。



「じゃーね、またいつか会えたら」



そしてそのまま歩いていってしまった。










「・・・ったく」



残されたラビは、バンダナをはずし、1人ため息を吐いた。


言われたことにはムカつくし、まだまだ素直じゃない態度に呆れもする。

けど、確実に、ユアが変わっていってるのが分かった。

その事が自分のように嬉しかった。


ユアがラビの眼を嫌いだと言った理由は、何となく分かっていた。







“あいつはオレに似てる”







自分の感情を押し込めて過ごすユアの姿は、ラビにとって、見覚えのあるものだった。





“だったら―――” 





オレがあいつを変える。

けど、あいつはまだ間に合う。

ココロから笑えるようになる。

オレにはできねェことを、していて欲しいって、勝手なことを思ってしまう。






ラビにとって、ユアはいつの間にか、特別な存在へとなり始めていた。






 
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