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□家決めましょうか
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朝から呼びつけられた(前話参照)俺と臨也はソファーで寛ぎながら午後のひとときを過ごしていた。
『で、家はどうするの?本当にシズちゃん家に住んでいいのー?』
家の中での臨也は人目がないのもあってか幼い表情を浮かべることが多い。
今だって俺の腕の中におとなしくおさまっている。
普段甘え下手なのだが一度甘え始めてしまうとこれだ。
どうやらマーキングのつもりなのか時々体を刷り寄せてくる。畜生、可愛いじゃねえか…。
『あ゛ー…』
そうだった。
同棲には色々準備が必要なのだ。手続きやら片付けやら…。
しかしまぁ、とりあえずは住むところから決めなければ。
『うちは狭いぞ…それにボロイ。手前さえ良ければかまわねえが……てか手前オートロックついてないの嫌だろ?』
『そうだねぇ、オートロックは欲しいなー仕事絡みで何かあったら嫌だし。』
『だよな…』
『この家でもいいけど?…あ、でもオートロックはいいんだけどキッチン狭いよね、あとお風呂も。』
そんなことない、と言おうとして……やめた。
これってキッチンに一緒に立ちたい、お風呂も一緒に入りたい、ってことだよな?
そんな可愛い臨也のお願いを俺が断るわけがない。
『あー…その辺は考えないとなー…あとは?』
うーん、とか、えーと、とか言いながら悩んでる臨也。
『あ、立地は?新宿?池袋?それとも思いきって調布に一戸建て買っちゃう!?』
『あぁ!?俺が、んな高いもん買えるわけねぇだろうが!!手前あの約束忘れたのかよ!!』
臨也は数回瞬きをしたあと
『あ、そっか。家賃は折半だもんね。ごめん。』
急にしょんぼりして俺の腕から離れる。
あ、コーヒー入れてくるね。
なんて言う臨也。
半ば無意識に、立ち上がった臨也の腕を掴んで引き戻した。
『…………今は一戸建ては無理だ。………今は、だぞ。』
再び俺の腕におさまった臨也は黙って耳を傾けている。
『…引っ越せばいいじゃねえか。先は長いんだ。俺が払えるようになったら、いつでも、』
『………うん、』
マグカップは危ないからテーブルに置き直して。
その柔らかな黒髪に指を通しながら俺は言った。
『そうしたらよ、池袋と新宿の間にしようぜ。ちょうど中間距離。これならお互い仕事行くの楽だろ?』
『しょーがないな、………でも部屋は俺に選ばせてね?』
減らず口叩いてるみたいでデレてる臨也。
こいつも俺と同じ気持ちなのだと思うと嬉しくて。
引き寄せた腕に少しだけ力が入った。
ちなみにそのままソファーでたっぷりとイチャイチャしたあとに地図上に定規できっちりと中間距離の印を刻んだのは言うまでもない。