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□そして、君を
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男同士の恋愛に偏見はなかった
自分が男を好きになるかどうかは別として
だから、白石が俺の事を好きだと言った時には多少なりとも驚いた
だって、あの白石が、完璧と謳われている白石が

「なぁ、千歳」
「なんね?白石」
「好き、やねん」
「…は?」

俺のことを好きだというのは誰でも驚くだろ?

「あ、や、ちゃうねん、その」
「…白石、俺んこと好いとっと?」
「………」

壁に追い詰めるような姿勢になってしまったけど、そのお陰か本意が知れた
そうか、白石が

「…じゃぁ、試しに付き合ってみるとや?」
「え」

…その顔は反則だ、可愛すぎる
そのときの幸せそうな顔を、俺はきっと忘れない































白石と付き合い始めて数日経ったある日
2年生の女子に呼びだされた
名前も知らない子だった

『放課後、体育館裏に来て下さい』

なんというか、ありきたりすぎて面白かった
とりあえず行ってみたら、女の子が一人待っていた
容姿は悪くない、むしろ可愛い方だ
だが、白石をいつも見てる分やはり見劣りする様に思えた俺はもう末期だろうか

「遅れてすまんばいね」
「あ、千歳先輩、えと、その…」
「…俺、部活に行くけん、手短に頼むばい」

やはり、一挙一動が白石の方が可愛い

「す、好きです、付き合って下さい…!」
「…俺、付き合うちょる人がいるけん、付き合えなか」
「…そう、ですか、…そうですよね、私なんか、つり合いませんもんね…」

そう言って泣きだした彼女(名前なんか知らない)
悪いが、泣かれたって君みたいな子になびく様な奴じゃないんだ

「悪かね、じゃ、俺はこれで…」
「っま、待って下さい!」
「…なんね?」
「最後に、お願いしていいですか?」

するといきなり詰め寄って、首に手を回し、キスをしようとしてきた
まぁ女子の力が男子に叶う筈もなく、ギリギリのところで踏みとどまった

もし、俺の後ろから見ればキスをしてるように見えるに違いない

後ろで誰かの足音が聞こえた気がしたが、気のせいだろう

「俺は、そういうことする子は好きじゃなか」
「っ…!すみ、ませんでした」
「俺よかいい男は五万といるから、焦る必要なかよ
 じゃ、さよなら」


三歩あるけば、君なんかのことはもう忘れるから大丈夫
安心して他の男子と乳繰り合っていればいいんじゃないか?
そんなこと口には出さないけど
そして俺は白石の元へと急ぐ

早く、早く
君の笑顔に癒されたいよ




















「…あんなぁ千歳、話があんねん」
「何ね?白石」

白石の口から出た言葉は、鋭く俺を貫いた

「…っ、俺と、別れてほしいねん」
「え…」
「俺に付き合うてくれて、おおきに」
「…理由、聞かせてくれんね?」

何か白石の嫌がるようなことをしただろうか
もしかしたら、俺の知らない内に傷つけていた?
それとも、俺に飽きた?

そこまで考えて、女子に告白された時のことを思い出した
あの足音は白石だったのではないか、と
じゃぁ、誤解しているのか、白石は

キスまがいのシーンを見て
俺が浮気してると思って
俺のことを最低だと思って

そして、嫌いになったのか

「俺んこと嫌いになったと?」
「っ、そうや、」
「…わかったばい
白石、楽しかったけん、また付き合いたくなったら俺のとこ来なっせ」

そう言ったのは、俺がまだ白石が好きだから
未練があるから
もしかして、白石は他の女子と付き合うのかもしれない
それは嫌だな

まだ、諦めた訳じゃないから
今度は俺から、告白してみようか

だから、覚悟しておいて?

そして、君を
また俺のところへ、連れ戻してやる


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