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□少年Tとの出会い
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※黒子が幼い上に敬語じゃないです。正直誰おま状態ですがそれを許せる方のみどうぞ。
※五歳ぐらいの子の話し方は平仮名ばっかりのイメージがありますが、読みにくいので普通に漢字で表記してます。色々すみません。


■主視点

ある日の昼下がり、なんとはなしにふらりと寄った公園で、彼と出会った。
彼はベンチに座って、ぼんやりと宙を眺めていた。
その瞳はどこも見ていないようで、まるでこの世界になんの関心も持っていないようで、なんだかとても悔しく感じて、なんとなく、彼に声をかけた。

「何してんの」

彼は驚いたようにこちらを見た。
多少の違和感があったが、俺はもう一度彼に同じ言葉をかけた。

「何してんの」
「ボクを見つけられたのは、家族以外でキミが初めて」

彼の言っていることがよくわからない。
初めて?見つける?何のことだ。

「だってお前はソコにいるじゃん、ユーレイじゃあるまいし」

そこで言葉につまった。彼は泣いていた。
声を上げて泣いている訳ではない。ただ静かにハラハラと涙が零れていく。
その姿はきちんと見ておかないとそのまま消えてしまいそうで、守ってやりたくなった。
そして彼はぽつりぽつりと話し始めた。

「ボクは、影が薄いの、僕から話しかけないと、みんな気づいてくれないの、だいたい驚かれて、勝手にどっか行くな、急に出てくんな、って言われるの、ずっと、近くにいたのに、はじめからそばにいたのに、いないって言われるの、お母さんも、お父さんも、おばあちゃんも、見つけてくれるけど、たまにボクを見失うの、とても、さみしくて、つらいの、だから、キミがボクを見つけて、見つけてくれて、うれしかったの、なんでか、泣いちゃったの、でも、うれしいからなの、うれしい、うれしいの」

事情はよくわからなかったが、感謝されてるらしいということは分かった。
彼が、とても悲しんでいたということも。
それが今嬉しさに変換されているということも。

「じゃあ今までの奴らはお前の事をわかってなくて、もったいないな」
「…そんなことを言われたのも初めて」
「そっか、いいじゃん、初めてでも何でも。これから知ってけば」

手始めに、一緒に遊ばない?
そう聞いたら彼は初めて笑顔を見せた。


鬼ごっこをやって(少年は体力が皆無ですぐにへばってしまった)、
かくれんぼをして(初めは嫌がったがちゃんと見つけたらもう一回もう一回とせがんできた)、
おえかきをだらだらとやった(ふたりとも別段絵が上手いわけじゃないが、ストーリー仕立てにしたりして遊んだ。少年は絵本が好きらしい)。

近くに小さいバスケットボールコートがあったから、その辺に転がってた誰のものか分からないボールでバスケをした。
少年はいたく気に入ったようだった。
交代でシュートを入れたが、少年は一本しか入らなかった。

「あー、疲れたー」
「はーっ、はーっ、はーっ、っげほ」
「うお、大丈夫か」
「だい、じょぶ、げほ」

もうだいぶ日も暮れていたし、そろそろ帰らなければならない時間だ。
だが少年をこのままにしておくわけにもいかないので、隣りで背中をさする。

沈黙。きまずくはない。
少年の息づかいもだいぶ正常になってきたようだ。

「落ち着いたか?」
「うん、ありがとう」
「もう時間だな、一人で帰れるか?」
「大丈夫、帰れる、……けど」
「けど?」
「これで終わり?もう会えない?」

随分とまぁ懐かれたものだ、悪い気はしない。
むしろ嬉しいとすら、当然とすら思っている自分がなんかやだ。

「会えるよ、当たり前だろ。また遊ぼう、明日にでも」
「ほんと?ボク、またキミと遊びたい、明日にでも!」
「じゃあ約束な」
「うん」

ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます、ゆびきった。

「そいや名前聞いてねーや、お前名前は?あと年齢」
「黒子テツヤ、五歳。キミは?」
「加藤梶、七歳だよ」
「じゃあ梶お兄ちゃん、またあした、ここでね、約束、守ってね」
「ん、もちろん、明日な、テツヤ」

少年Tとの出会い
(たしかこれがテツヤとの出会い)(可愛かったのに、今じゃ敬語のつっけんどんだ)


ついに手ェ出しちゃった…!


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