本編

□第三章
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それからというものの、ガイが合流したことにより積もる話しもあるが一先ず話しは追い追いにし、今は一刻も速くタルタロスから離れるというジェイドの提案を呑み、アニスがいるであろうセントビナーを目指すこととなった。
挨拶もそこそこに出発したため、とりあえずお互いの名前くらいは知っておく方が良いと判断した俺は、行軍しながらもガイに話しかける。すると──

「へぇ、あんたがあの『アイン』か・・・」

そう呟くと、意味深な言葉と共に全身に視線が行き渡る。ガイまで、ジェイドと似たような反応するとは思わなかった。その一瞬鋭くした目に心当たりがあった。同じタイミングで突然何か思い出したように、そうだ、と声を漏らす

「あんた昔、ヴァン謡将と一緒にファブレ家のお屋敷に何度か来ていたよな」

予感は的中した、使用人としてガイもあの時は既にいた。尤もあまり顔を合わせていなかったが、まああれだけ通い詰めしていれば思い出すなと言う方が無理だ。当時は事あるごとに奴に連れ回されたからな。今はもうないが。

「へ?そうなのかアイン?」
「ああ、だが奴さんが来ていたのは、お前が誘拐される前の事だからきっと忘れちまってると思うが」
「知らねぇなー。アインとは初めて会ったし」
「・・・そうか。懐いていたんだがな」

突然話しに乗っかかるルークに、そう答えたのはガイだ。彼はルークの記憶が戻らないことに少なからず落胆する。
まあ、ルーク誘拐の頃から色々と多忙な日々が続いており、中々今の『ルーク』の姿を見ることは出来なかった。ただ一度アイツを連れて来た事があったが、結局遠目から見るだけに留まったぐらいだ。
その話しはそこで終わり、更にそこから半日程経ち、無理が祟ったのかイオンが体力の限界に到達したのと、日も暮れはじめたということで足を止めその場は野宿となった。

「・・・戦争を回避するための使者、ってわけか」

そこで、簡単な食事を終え、後片付けは俺とティア──ここまでずっといつもよりえらく上機嫌である──で手早く済ませその間、事情の知らないガイに、ルークからの信頼が強い彼に一通りの説明をし、聞き終えたガイが、輝く輝石を挟んでイオンを見ながらそう呟いた。

「でも、なんだってモースは戦争を起こしたがってるんだ?」

誰もが疑問に思うであろうことをあえてガイはイオンに問うが、イオンはそこで表情を曇らせる。

「・・・すみません。ローレライ教団の機密事項に属していますので、お話できません」

その応答にガイは、たまらず嘆息する。

「ルークもえらくややこしいことに巻き込まれたなぁ」

ま、確かに・・・。
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