本編

□第十五章
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ティアとの会話から数時間後、第四師団の面々、と言ってもユリアシティの広場に集合しているのは俺を含め、ジゼル、ルゥナそしてユミス、メルス姉妹の計五名だった。ミルティは少し前に呼び出し既にダアトに向かわせ今この場にはいない。
他にも団員はいるのだが、アクゼリュスの救助で瘴気を長時間受けてしまった為に今療養中で、今は殆ど機能していないと言って良いくらいだ。当分はこの人員で遣り繰りするしかないのが現状。
とまあ、それはさておいてだ。

「よし、今後の方針だが、預言通りに事が進んでいる中で、今一番厄介な人間がモースだ。奴を牽制し、出端を挫く必要がある」
「つまり、六神将全員であの豚を抑圧させると言いたいんだな」

ジゼルの奴どうしたんだろうか、台詞の端に棘が見えているような物言いだ。機嫌が悪いのだろうか、と見るとどうやらそのようだ。無表情で腕を組み二の腕辺りで指を叩いているのが、何よりの証拠。何が彼女をそんなにさせているのだろうか。
とりあえず今は方針を伝えるのが先決だ。

「いや、表立ってモースの野郎に面と向かえば今までの苦労が台無しになってしまう。そこでリグレットはシンクとラルゴとで、もう少しモースの命令に従うフリをしていてほしい。頼む」
「・・・分かった」

嫌な顔一つせずとは言うわけにもいかず、渋々ながら了承してくれた。

「そこでだリグレット。何故か教会に籠もっているモースだが、数日もすれば行動を再開することになるだろう。となると奴はすぐにバチカルでへキムラスカ国王に進言しに行くに違いない」
「何故ですか?」

と、これはルゥナだ。

「インゴベルト陛下の愛娘が崩落したアクゼリュスにより行方不明と巷ではそうゆう風な話が出ていると言っていたな」
「はい、それが一体?」
「分からないか?何故このタイミングであの戦争を起こしたがっているモースがバチカルに行くのか」
「・・・あ!」

どうやら勘付いてくれたようだ。
俺はそれに正解の意味を込めて頷いてみせた。

「ナタリアが行方不明になったのは、全てマルクトだ、と言うつもりなんだろう奴は。そして、何かにつけ後付けした理由を並べ二国間で戦争を勃発させる、そこが奴の狙いになるわけだ」
「なるほど」
「そう言うことだから、奴が向かう途中油断したところを叩く必要がある。まあ、船上で済ませられるのあればそこで実行してもらうと助かる。何と言っても目的地到着寸前は一番気がゆるみやすい時だからな、だからリグレット、その時にはこう思いっ切り打ち込めてやれ」

と、首もとに手刀を振り落とす動作を見せた。
奴に遠慮するつもりなど毛頭ない。あの豚は俺の愛する妹を自身のスパイとし、非道に遣っていたのだ。前世の記憶の記憶の中でだがな。とは言え、その罪は途方もなく重く、決して許されることではない。
本来ならファーストコンタクトで行うべき恨み辛みを漸く大っぴらに晴らすことができると思うと、笑みがこぼれてくるな。

「くくく・・・ふふふ・・・」
「「「「・・・」」」」
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