本編

□第九章
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ガイが名乗った後何故かジェイドが続こうとする。
しかし、この流れであるのならば次はティアとアニスになると思うのだが、彼女等は今二人して俺の両側を挟むような形でいるのである。アニスは俺の手を握り、ティアはジャケットの裾を摘まんでいる。まるで俺の動きを制限し監視しているような・・・考えすぎか?

「マルクト帝国軍、第三師団団長、ジェイド・カーティス大佐です。陛下の名代として参りました」

眼鏡の位置を直しながらも、ジェイドがそう自己紹介をすると、将軍二人の顔が驚愕の色に染まる。バチカルの軍人はジェイドの名を聞くと一様に皆同じように顔色を変えるものなのだな・・・悪い意味で。

「き、貴公があの、ジェイド・カーティス・・・」

二人とも顔が青ざめている。特にセシル少将の方が色合いが濃いように見える。逆にジェイドはうっすらと笑みを浮かべていた。

「いやいや、ケセドニア北部の闘いでは、セシル少将に痛い思いをさせられました」
「いえ、ご冗談を・・・私の軍はほぼ壊滅状態でした。あの時ダアトから派遣された軍、と言うより小隊ですな。それが無ければ今頃・・・」
「ええ。あれ以上いさかいが続いていたらお互いジリ貧状態になっていたでしょう。いやー、ダアト様々です」

顎に手を添えながら、特に気に止めることのない,いわば世間話をするようなニュアンスでジェイドがそう口にする。
昨今緊張状態が続いているせいか、何度もキムラスカとマルクトの軍の武力衝突が発生しているわけで、その度にダアトから派遣されることもあった。といっても直接介入した部隊は俺と第四師団から極々少数のみである。人数が少なく、六神将等を連れていけなかった理由は、単にモースに邪魔をされた為である。
ジェイド達が口にしていたその闘いは、最も規模が大きく戦争までは発展してないものの、だが両軍に残した傷跡はかなり深い。だと言うのにまだ小競り合いを続けていたのだ。これでは両軍が全滅しない限り収まることは無いだろうと強引に中央付近から戦場に乱入し鎮圧した次第である。
当然武力だけで収まりきる筈がない、モースから秘密裏に連れ出したイオンの登場もありその闘いは収束することとなった。
まったく、自滅覚悟で戦闘しようなどと本来あってはならないことであり、そのような状態にまでする必要があったのかと上層部にいる人間に問いただしたいものである。
《アイオンの役》があった後でさえこの調子である。まあ、俺も人のことは言えないな。イオンが話し出すまで和平と言う道を開拓しようとしなかった訳だからな。
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