本編

□第十章
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ナタリアには主にヴァンの扱いについてどのようになったのか聞いておいた。
聞くところによれば、結果として奴の死罪は免れたらしい。どうやらルークとダアトからの抗議が効いたようだ。とは言え、死刑は免れただけにすぎず、ルーク誘拐の容疑――容疑も何も、実際、七年前に実行している――は残ったままである。今もまだ牢屋に監禁されているとのこと。そこで、釈放の条件として、マルクトと和平条約を締結するあたり、救援要請に応えるべく。明日アクゼリュスに出立する、ルークの護衛として同伴させ、それを見事果たせた後に無罪にするよう取り計らうと陛下が決定したらしい。
と、ナタリアはまるで自分が勝訴したような顔で語っていた。実際、ルークの願いを叶えることが出来た事が大きいようである。
すると、明日、アクゼリュスへ親善大使として赴くルークのことを案じるナタリア。心配で心配で仕方がない様子を見せており、自分もこの旅に同伴したいと言っていた。しかし、それは陛下に許可されなかったようだ。が、言い付けを守ろうとは思っていない表情が少々気になった次第である。ナタリアのことだ、陛下の目を盗んでルークに同行しようと考えているかもしれない。意外とナタリアも父親に似て頑固者である。まあ、そのお陰でラルゴの悩みの種が一つ増えてしまいそうだ。
和平条約を締結したことは、明日ルーク、ティア、ジェイドそしてイオンを交えた要人等に告げるようにするとのこと。ここで、話したことは発表があるまで内密にしてほしいと頼まれた。
なら、何故俺だけに言ったのか、聞いたところ。先に告げたのも、口止めをしてもらうのも、いの一番に俺に報告したかったのと、約束を反故にするようなことはしない、だから頼りになる、とナタリアはそうはっきり言葉にしていた。そういうことなら、頼まれない訳にはいかないだろう。了承の意を示すと、安心したように頬を綻ばすナタリアであった。
後は他愛もない話――これまでの旅の内容を聞かされた。その中でも、とりわけ俺がルークと合流したところの件を事細かに――をして部屋を後にした。その際にナタリア――眉を逆八の字にし、胸に拳を添えながら――が。

「貴方はこのままダアトに戻るのですか?」

と聞いてきた。
今回、導師守護役の任務がまだ満了していないことに気付いた訳である。まあ、バチカルまでのつもりはイオンには無いだろう。オリジナルの影響か、アイツも俺を連れ回したい癖があるらしい。
導師守護役として、俺はイオンがここにいる限りはまだ戻ることは無い、と告げ退室した。
そう言えば、扉を閉める間際、ガッツポーズをするナタリアの姿が目に入ったような・・・気のせいか。
その後、イオンに確認をとったところ、預言にあった通りに聖なる焔の光である“ルーク”に付いてアクゼリュスへ向かいたいと言っていた。俺の予想を裏切ることなく向かう気満々である。無論止めるつもりは無いが。
そして当然のように俺を追従させるつもりで、よろしくお願いします、と告げていた。
これで、俺個人としても導師守護役としてもアクゼリュス行きが決定した訳であった。
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