本編
□第十二章
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――あーあ。貴方って人はつくづく嫌な人よね。分かってはいるけど・・・時たま、狙ってやっているんじゃないかって疑いたくなるのよね・・・。
――お、『レイ』。無事に回復したんだな。もうここまで出てきて問題ないのか?
――今まで眠っていたもの。お陰さまでね。
――そうか、本当に良かった。
――・・・。
――どうした?いきなり黙り込んで?
――何でもない。ホント卑怯!
――??
――そんなことよりも、気付いているんでしょうね?体。まあ、ここに行きやすくなっていること自体が証拠ね。
――そうだな。復活して早々負担をかけてしまうことにすまないと思っている。又してもお前ばかりに頼ることになるな。何も出来ない自分が不甲斐ない。
――仕方無いじゃない。今外は『貴方』で中は『私』だもの。それに、貴方とは一蓮托生。お安いご用よこれくらい。
――フッ・・・そう言ってもらうと助かる。
――・・・寧ろ、私しか味わうことが出来ないし。これはこれで・・・ンフフッ・・・役得役得。
――何か言ったか?
――んんっ!気にしないで。とにかく、私のことは、まだ大丈夫よ平気・・・と言いたいけど・・・あんまり無理できないし、結構きつい・・・何此処?酷すぎる。濃度が尋常じゃないわ。フーブラス川のあれよりも倍以上あるじゃない!
――ああ、それは俺も感じていた。しかし、この街に足を踏み入れてから我慢してはいるが、正直立っているだけで精一杯だ。侵食度も半端ない。この通り、体の至るところに紫色の斑点が浮き上がってしまっている。
――そう遠くない内に、アウトってことになるかもしれないわ。住民より先に私達が。
――かもしれん。だが――
――・・・やるんでしょう?
――そうだ。ここで挫折してしまえば、今までの苦労が水の泡になってしまう。
――これが、貴方のスタートだものね。
――そう言うことだ。割りに合わないかもしれないが、これからも、手を貸してはくれないだろうか?
――もう!何言ってるの!?私達は謂わば一心同体、切っても切れない関係なんだから!そう言うのは、もうこの先、無しだからね!それに、貴方だって逆の立場だったら同じことを言うに決まっているわ!
――当たり前だ。目の前で困っている人間を放ってはおけない。誰であってもだ。
――そう言うことなんだから!
――むむ。
――・・・ま、そのおかげで要らぬ人間から好感を持たれるようになるのよねこの人は・・・はぁ・・・。
――急に溜め息を吐いてどうした?たしか、溜め息を吐くと幸せが逃げるらしいぞ?
――それって単なる迷信でしょ?っていやに珍しいことを言うのね・・・もしかして、誰かから聞いたとか?
――ああ。妹が自信満々に言っていたのを思い出してな。
――・・・アニスのことを話すときのデレッとした顔もそれなりにムカつくのよね・・・今に始まったことじゃないけど。
――??・・・女性陣は時折一人の世界に入るときがあるな。何故だ・・・?うーん。
――とにかく!ここではそんなに無茶はしないこと!いくら前よりも耐性があるにしたって限度があるわ!もう表面化しているわけだし、私もやれるだけのことはするから。いい?呉々も無理せず自分の体第一に考えること!在ってなんぼなもんでしょ?
――・・・分かった。俺の方でも回復術を常に施していることにする。なんなら、もう一人追加させてまでやり遂げてみせる。そろそろ行動に移す、お前も気を付けるんだぞ。じゃあな。
――・・・こっちが仏になるか、向こうがなるか、正直私でも分からないから・・・本当に、気を付けて・・・私の・・・半身・・・。