本編

□第十二章
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士気が高まったお陰で誰も欠けることなくその後、魔物駆除をしつつ鉱山夫の人々の元に辿り着くことが出来た頃には、既に夜になっていた。思ったよりも早目の進捗率で何よりだ。
――ゴホッ。
一晩かけ、取り残されていた人々を介抱し翌日は坑道外への移動――とは言え、途中の道すがら魔物には遭遇するは、瘴気に行く先を阻まれてしまうは、少々手こずってしまったぐらいか――だけで過ぎ去っていった。
当然その間も連絡員が俺の元に訪れては、報告し、俺からの命令を持っていく場面もあった。
外も概ね順調との事。更には師団員達の間で怪我、瘴気の影響は今のところ
無し、住民等の都合など全く持って考えていなかった俺達の救助活動によるストレスを感じている患者もゼロ、と受けている。実に喜ばしいことだ。
――ゴホッゴホッ・・・ん、んんっ。
それから、また幾ばくか時間が経過し、ルーク達と邂逅するために残っていたラルゴ――アッシュとシンクには一時ディストの元へ行き、とあるものを持ってくるように言ってある――と共に作業を続けていた時だ。

「落石よ!退避ー!」
「崖から十分に距離を空けて!」

突如として、何の前触れもなく弊害というのはやって来るものである。鉱山道と街の出入り口を繋いでいる通路に落石が発生したのだった。とは言え、こういうハプニングには手慣れており、師団員達は無理せずに危険性のある崖側を離れ、住民達と共に回避をしていたので問題ない。問題なかったのだが――。

「お母さーん!!」
「た、助けてよー!!」
「ラフィ!タク!」
「お母さん!直ぐにここから離れないと危険です!」
「ですが!あそこに私の子供がまだ!!」
「「お母さぁ〜んっ!!」」

あろうことか、崖の麓付近に逃げ遅れた子供が二人――男女のペア。母親の言葉を見るに姉弟なのだろう――残っていたのだ。恐らくは逃げおおす際に弟の方が石に躓いて転んでしまった、と言ったところか。そして岩がパラパラと落ち始めている時点で怖くなってしまい姉弟二人してへたりこんでしまったか。もう落石が起こってしまっている、始めの内は回りに落下していた。
と、姉弟の頭上を狙ったかのように途轍もない程の大きさの岩が何塊も降ってきた。

「危ない!!はやくこっちにお出で!」

師団員の内の一人が二人に声を咄嗟にかけたが、生憎視線は上を向いて固まっているため全く聞いていない様子。
攻撃を加えようにも、下手な武器では到底破壊できるような代物ではなく、かといって強力な譜術を詠唱しようにもあまりにも時間がなく、そこにいる誰もが最悪の事態を想像していたのは容易に出来ていた、その中。

「アイン!?」

気がつくと俺はすっかり恐怖に怯えきってしまっている姉弟の二人の元へ体を滑らせ、その小さな体を守るように前に立ち、両腕から二丁の譜銃を出し、上方へ構え気合いを注――。

「っ!・・・かはっ!!」

く。こんなときに咳が・・・!
今ので、音素が拡散してしまったか。もう一発撃とうとしたがもう目の前に岩石が迫っている!
もう後は二人を迫り来る岩岩等から庇うしかない!
間に合え!

「伏せろ!」

すんでのところで覆い被さることが出来た、正にその瞬間。

――パンパンッ!!
――ドゴンッ!

「ぐっ!」

何処からか銃声と何かが破砕される音が聞こえたが、俺はそこで意識を手放した。流石に岩の礫が頭にぶつかれば・・・。
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