本編

□第四章
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二日の後。
俺達は無事、セントビナーの街に到着することができた。幸いであったことに、途中あれきり一度も、襲撃らしい襲撃に出くわさなかったことだ。疎らに、魔物て遭遇してはいたが、その程度だ。決意はしたはいいが、人殺しは避けるに越したことはない。
そして、今俺達は街の出入口から少し離れた場所の茂みの中に倒れ、そのままになっていた馬車の影に隠れていなければならなくなった。その理由は。

「何でオラクル騎士団がここに・・・」

そう、セントビナーの街入り口手前に、オラクル兵がいたからだ。彼らはたまたま立ち寄った訳ではなく。明らかに人探しをしている様子で街の中に相当数の兵がいてもおかしくない状況。

「タルタロスから一番近い街はこのセントビナーだからな。奴ら、休息に立ち寄ると思ったんだろ」

先程のルークのうめき声に答えたガイに、ジェイドが意外そうな声を出した。

「おや。ガイはキムラスカ人のわりにマルクトに土地勘があるようですね」
「卓上旅行が趣味なんだ」

さらりとそう言ったガイに、ジェイドは例の薄い笑みを浮かべてみせる。
勿論その言葉を全く信用していないようにみえてしまうところがジェイドであり、ガイもガイでさらりと言ってしまうのは、おそらくは前以て用意していた台詞文句であるためと伺える。

「これはこれは、そうでしたか」
「そうさ」

ようは、腹の探り合いをしている訳だが、正直そんなことはどうでもいい。今重要なことはただ一つ。

「なあ、いつまで俺はこうされていなければならないんだ?」

辟易とした声音で不平を漏らす。
何故なら、俺の両腕をルークとティアがガッチリと二人掛かりで掴んで離さないのだ。いや、掴んでいるなんて生易しいものではない、ほぼ抱き着かれている状態だ。それが隠れる前からずっとされていれば誰しも否応なしに文句の一つも出るところだろう。
一体俺が何をしたんだ?とジェイドが俺の心中を鋭く察したのか、眼光も鋭くなりつつも笑みを貼付けたまま答えた。

「おやアイン、忘れた言わせませんよ。何せあなたは、あちら側に戻ろうとしたのですから」
「いや、だからそれは一瞬忘れていただけだと、何度も言っているだろう?」
「しかも、六神将に刃を向けた時の殺気、あれを忘れることなんて出来ませんよ」
「ぬっ・・・」
「それにあなたはこうして押さえ付けていなければ、何をするか分かりませんしね」

やはりあの時察知していたんだな、こんな所でほじくり返すとは思いも寄らなかったぞ。やはり根に持つタイプなんだな、コイツ。
しかしまあ、言ってみればジェイドの言ったことは全く以て正論だ。俺みたいないつ味方に牙を向けるやもしれない人物が、その起因になる事象を目の前にした時、果たして自由にしていてもよいだろうか。答は十中八九、否だ。危険分子はなるたけ遠ざけるかしないと安全確保が取れない。
と分かってはいるが、その為に何も二人して俺に付きっ切りでいなくていいと思う。何せこの体勢だ、三人とも歩きづらい。どちらかと言えば、ティアが一番歩くことが困難に思えて仕方がない。
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