ss

□競奏
1ページ/2ページ




「今日の放課後、四人でカラオケいくよっ!!」
いつも通りの昼休み。
屋上でご飯を食べていた時、新羅が突然そう叫んだ。
「いきなり何なの新羅」
門田が口元によせてきた卵焼きを口に含みながら訊ねる臨也。
「いやぁ、昨日セルティと高校生活について喋ってたんだけどね、ていうか聞いてよ〜!!セルティったら昨日も相変わらず可憐で優雅で可愛「話が脱線してるぞ、岸谷。」
あらぬ方に話が転げ回っていくのを阻止するべく口を挟む門田と、彼に異様にくっついている臨也に殺気に満ち満ちた目線を送っている静雄。
昼真っ只中とは思えないこの人気の無い屋上に居るのは新羅達四人だけだ。
まぁ人気の無い原因はとうの四人だが。
「おっと失礼。」
コホン、一つ咳払いをして改めて口を開く。
「でね?僕らって、いつもつるんでる割に一緒に何処かに遊びに行くとかした事ないだろ?だから今日の放課後、高校生らしい思い出を一つ作りに行ってみようじゃないか!!」







―放課後―。

校門で集合した四人はそのまま駅方面に歩きだす。
20分程歩きカラオケ店の中に入っていった。
「いらっしゃいませー」
「三時間パックでお願いします。」「かしこまりました。お部屋のご希望とかは御座いますか?」
「ぅーん、じゃぁココで。」
注文を済ませ、マイクなどの器具を受けとり二階へ上がる。
この店は1階が漫画喫茶、2階がカラオケになっている。
部屋に入り、各々すわる。
机を挟んで静雄と門田、新羅と臨也の席順だ。

「さて、じゃぁ誰から歌おうか?」
機器を弄りながら皆を見渡す。
「そりゃ手前が誘ったんだから手前だろ。」
「ん?そうかい?」
「そうだな。俺も別に構わないぞ。」
「まぁ俺達は歌う曲も決まってないし、良いんじゃない?」
ジュースに口をつけながら臨也も賛成する。
全員の賛同も得られたところで新羅は曲を入れた。
「じゃあお言葉に甘えて。」

入れたのはラップ調のj-popだ。
「へぇ以外だな。」
下手でもなければ上手くもないが、良く舌が回るものだと思う。
まぁ普段あれだけ四字熟語を乱用しているのだから、本人としてはお手の物だろう。

暫くして新羅が歌いきると、テーブルの上にマイクを置きながら新羅が門田に話しかけた。
「じゃあ次は門田君で。」
「何で指名だ。」
「面白そうだから。」
さらっと言ってのける新羅にため息が出るのを堪えつつ、潔く曲を入れる。
入れたのは有名外国人グループの曲だ。
「ドタチンの癖に洋楽とか。」
「癖にって…。」
「だって演歌とか歌ってそうじゃん?」
「どんなだよ。」
確かに意外な選曲だったが、イントネーションも完璧で巧かった。


歌い終わった門田に新羅が飲み物を渡しながら、次の人選を聞く。「ぅーん、そうだな…。」
「まぁあの二人のどちらかしか無いけど。」
「じゃぁ静雄でどうだ?」
そう言って静雄に視線を移す。
「俺でいぃのか?」
「どうせ歌うんだからどっちが先でも一緒だろ?」
そう言ってマイクを差し出す。
「ぅん。いぃんじゃないかな。」
新羅が促したのもあり、静雄はおずおずとマイクを受け取った。
「何を歌うんだい?」
新羅が静雄に問いかけると、静雄はちゃっちゃと曲を入れる。
モニターに映し出された曲名は―。

『津軽海峡冬景色』





確かに静雄が何を歌うのか想像がつかなかった。
しかし、この中の誰一人としてまさか演歌を選曲するとは思っていなかったと思う。
しかも歌いなれている。
演歌は音が外れたりして音程を計るのは難しい。
にもかかわらず、静雄は見事に歌いこなしていた。
「まさかdath。」
「新羅ウザイdath。」
若干頭の混乱している新羅に辛辣な言葉を浴びせ掛け、臨也はケータイに視線を戻す。
「あれ?臨也見ないの?」
「んー、別に聞こえてるしね。」
ケータイから視線を上げず答える。

そうこうしているうちに静雄が歌い終わった。
「静雄凄いじゃないか!!」
「だな。うまかったぞ。」
「そうか?」
ほんの少し照れながら静雄はマイクをテーブルに置いた。
「完璧に歌いこなしていたよ!てゆーか何で演歌なんだい?」
「あぁ、小さい頃から親父が歌ってるのをよく真似していたからな。おれも気づいたら演歌ばっかり歌ってたんだよ。」
「なるほどね〜。」
「じゃぁ、次は臨也だな。」
そう言って門田は臨也にマイクをさしだした。
しかし、
「だが断る。」
呆気なく拒否られたが。


「臨也ぁ。手前人の歌は聞いといて自分は歌わねぇとかふざけんのも大概にしろや。」
「俺歌うなんて一言もいってないし。」
「ふざけんなよ。こうなったら無理矢理にでも歌わせるからな。」
睨み合う二人を包む空気が徐々に重くなっていく。
これ以上はマズイと感じた門田が止めにかかる。
「おいお前ら!こんなとこで喧嘩するなよっ!!機器の弁償は洒落になんねーぞ!!」
そういって二人の間に割って入る。
「ほら静雄落ち着けって。そもそも臨也は何でそんな頑なに拒むんだ?」
門田の問いに詰まる臨也。
救いのてを差し伸べたのは以外にも新羅だった。
「あー、まぁ臨也の歌は聞かなくてもいいんじゃないかな。」
「何でだよ。」
それに一早く反応したのは静雄だ。
「いやなんでって・・・。」
臨也に続いて押し黙る新羅にいよいよ静雄と門田が怪訝な顔をしだした。
ほんの少しの沈黙の後、はっと静雄がひらめいた顔をした。
「臨也お前・・・」
そういって神妙な顔つきをする。「実はおん「俺に限って音痴とか無いから」
即座に否定。
「じゃぁ一体何だよ。」
流石にこれ以上隠し通すのは困難と判断したのか、はぁ、と溜め息をついて立ち上がる。
「臨也、」
「とりあえず、どーなっても俺のせいじゃないからね。」
新羅が顔を真っ青にするのにも構わず、臨也は曲をいれた。
「まぁせいぜい頑張りなよ。」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ