嘘つきハニー
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「芦屋、どこ行っちゃったんだよ…」
あの後、あちこち探してみたが、芦屋は見当たらなかった。
桃真は寮に戻り、自分の部屋に向かった。
部屋の中では萱島が待っていた。
「…芦屋、どこにもいなかった。」
「そっか。」
そう報告すると、萱島は頷いた。
「どういうことだって聞いてんだよ!」
その時、中津の大声が聞こえてきた。
「桃真、行こう。みんなに知られたら騒ぎになる。」
「あ、うん。」
萱島が慌てて部屋を出ていったので、桃真も後を追った。
佐野たちの部屋たどり着いた時、ちょうど中津が部屋から出てこようとした時だった。
「大きな声出すなよ。」
萱島は中津を引き留め、部屋の中に戻す。
「知るかよ!」
「みんなに知られたら騒ぎになるだろ!」
そうしたらいいのか分からず叫んだ中津に、萱島は珍しく大声を出した。
「そしたら芦屋が戻り辛くなるだろ。」
「え?」
萱島が部屋の中に入ると、桃真も部屋に入ってドアを閉めた。
「戻ってくるかもしれない。そんな気がする。」
「大丈夫だよ。きっと帰ってくる。芦屋はそういうヤツだよ。」
桃真は中津を宥めるように「な?」と尋ねる。
「…悪い。」
中津はそう言って部屋を出ていった。
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