嘘つきハニー
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「実は…僕、なんか病気かもしれないんです。」
「は?」
梅田はキョトンとする。
「時々、顔がカーッと熱くなったり、心臓がドキドキしたり…これって病気ですか!?」
「例えばどんな時に起こるんだ?」
意外に真面目に相談に乗る梅田。
桃真は「例えば…」と呟きながら考える。
「…萱島といる時…とか?ってそんなこと関係ないですよね。」
「……そういうことか。」
梅田はそう言って立ち上がる。
「へ?今ので分かったんですか?」
「あぁ。お前は確かに病気だ。」
“病気”という単語に桃真は「どんな病気ですか!?」と必死になる。
「それは…恋の病だ。」
「恋?いやいやそんなわけ…」
桃真は否定しようとしたが、梅田の冗談を言っているわけではなさそうな表情に黙り込んだ。
「じゃぁ聞くが、萱島と目が合う度にドキドキするだろ?」
「…します。おかげでまともに顔見れなくて困ってるんですから。」
梅田は呆れたような顔をして質問を続ける。
「でも、ずっと一緒にいるよな?」
「それは萱島といるのが一番心地良いし。」
ますます呆れた顔をする梅田に桃真は首を傾げる。
「他のヤツでも同じようにドキドキするか?」
「いえ別に。」
桃真の答えに梅田が「充分じゃねぇか。」と言うと、桃真は「何がですか?」と首を傾げた。
「(こいつ…鈍すぎだろ…)…お前が萱島のこと好きだって言うには充分過ぎる判断材料だってことだよ。」
完全に呆れてため息をつく梅田。
桃真は固まっている。
「…僕が…萱島を…好き!?そんなわけない…そんなわけないですよね!?」
ハッと我に帰った桃真は梅田にすがりつく。
「お前、何でそんなに嫌がるんだよ。」
「だって…もし、万が一、いや億が一僕が萱島を好きだったとしたら…その…初恋に当たるわけで…」
梅田は「それがどうした。」と聞き返す。
「…だって萱島からしたら僕は男なわけで…そうしたら…叶わないじゃないですか。」
「俺は男が好きだぞ。」
はっきり言い切る梅田に桃真は「梅田さんを一般の意見にしないでください。」と切り捨てた。
「だって叶わないなんて…そんなの…嫌じゃないですか…」
「叶うか叶わないかはやってみなけりゃ分かんないだろ。じゃ、俺は帰る。」
梅田は桃真の頭にポンと手を置いて去っていった。
「はい!?勝手に人のこと悩ませといて帰るんですか!?」
桃真は呼び止めようと叫んだが、梅田が止まることはなかった。
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「もう…朝か…」
あれから桃真は眠れずに朝を迎えていた。
考えていたのは自分が萱島を好きなのかということ。
よくよく考えてみれば中津たちへの想いと萱島への想いは違う気もする。
けれどそれを恋と呼ぶかどうかは桃真には分からなかった。
「…恋とかしちゃったら冷静に判断できなくなるじゃん。」
桃真はチラリと机に置かれたパソコンに目をやった。
母親から頼まれた任務を思い出すと、自然とため息が溢れる。
「…どうしよう…」
コンコン
そうしていると部屋に誰かがやって来た。
「はい。」
「来海、ちょっといいか?」
桃真が返事をすると芦屋の声がした。
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