嘘つきハニー

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「来海、寝てないのか?」

疲れた顔をしてベッドの上で体育座りをする桃真を見て芦屋が心配する。

桃真は小さく頷いた。

「…心配してたぞ、萱島が。」

「え?」

芦屋はベッドに腰かけてそう言った。

「俺さ、さっきまで落ち込んでて…そしたら萱島が相談に乗ってくれたんだ。」

芦屋は話し始める。

「でも、話してるうちに…萱島も何かに悩んでる気がして…聞いてみたら来海とケンカしたって言ってた。」

「…悪いのは全部僕なんだけどね。」

桃真が付け加えると芦屋は「それ、萱島も言ってた。」と言って笑う。

「何の話かは分かんないけどさ、萱島は来海を責めるような言い方したこと、悪いって思ってた。」

「…でも、もともとは僕が…」

桃真が反論しようとすると芦屋は話を続けた。

「来海が何か隠してること、来海が話してくれるまで待つつもりだったのにって言ってたよ。」

「萱島はいつもそうやって優しいんだ。」

桃真はポツリと呟くようにそう言った。

「だから調子が狂う。」

「来海?」

芦屋は心配そうに桃真を見る。

「どうしたらいいか、本当に分かんないんだ。こんな気持ち、初めてだから…」

桃真は泣きそうな顔を膝に埋める。

「…苦しい…何でこんなに苦しいんだよ…」

顔は見えなかったが、桃真が泣いているのが分かった芦屋は桃真の背中を優しく擦る。

「…芦屋、ごめん…泣くつもりじゃ…なかった…けど」

「いいよ、泣いても。」

芦屋の言葉に桃真はもう一度「ごめん。」と呟いた。
























「もう大丈夫か?」

「うん、ごめん。」

その後、桃真が落ち着くまで芦屋は一緒にいてくれた。

「俺、難波先輩の言ってたこと、分かった気がする。」

「え?」

芦屋の言葉に桃真は首を傾げる。

「今までも来海はどっかで俺たちと距離を置こうとしてる気がしてた。でも今日は本当の来海が見れたような…」

「…何それ。」

芦屋は嬉しそうにニッと笑った。

「不謹慎だけど嬉しかった。来海が俺のこと仲間だって言ってくれたみたいで。じゃぁ、俺戻るから。」

そう言うと芦屋は帰っていった。




























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