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□真夏も悪くない、かも
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照りつける太陽が嫌に眩しく感じる。体育の半袖短パンですら、その通気性を発揮できていない。
そして、暑い。
「なまえ、大丈夫か?」
「…倉間、」
「顔色悪いですよ」
「てか、こんな暑さで外で体育とか、マジありえなくね?」
「…サッカー部が何を言う。毎日暑い中サッカーやってるじゃん」
「夕方のほうが涼しくなるんで昼間の今ほど暑くないですよ」
それもそうか、と一人納得して汗を拭う。いや、マジで暑い。こんな中走れとか、先生の鬼、悪魔。
心の中で散々罵倒するものの、全く気は晴れなかった。くそぅ。
その上、走るのに先生がストレッチとかの為に時間をとった。むしろ早く走らせてくれ。んで、早く終わらせてくれ。
こちとらここ数日ずっと忙しくて、昨日なんか2時間しか寝てないんだから。ああ、ヤバイ。なんかクラクラする。
「って、本当にお前顔色悪いぞ」
「え?」
次の瞬間、強烈な眩暈がした。あ、これヤバイ。景色が、廻る。
意識が薄れていく中、倉間の声が響いたような気が、した。
薄っすらと目を開けると、白い天井が見えた。ぼんやりとその白い天井を見つめ続け、ふと思う。…何処だここ。
えっと、あれ?確か体育やってて…
「目が覚めたか」
聞き慣れた、暖かい声がして目線を右の方に移す。
「倉間…?」
そう言って起き上がろうとすると、両肩を掴まれて再びベッドに戻された。倉間は椅子に座り直して私に言う。
「起き上がるなっつーの。なまえ、お前倒れたんだぞ」
「え」
「どうせまた、無理して寝不足でもしてたんだろ」
倉間は飽きれた顔で私にそう言った。なんだ。暴露てたのか。
…敵わないなぁ。流石幼馴染。
「その顔は図星ってとこだな」
「…まぁ、ね。…そっか、倒れちゃったか。倉間が運んだの?」
「…まあな」
「え、マジ?重くなかった?」
「重かった」
「そこは嘘でも、大丈夫だ、気にすんな(イケボ)、ぐらい言えよ」
「うっせー(…本当はびっくりするぐらい軽かったけどな。ちゃんと食べてんのか?こいつ)お前…、もっと肉食ったほうがいいぞ」
「え?私に太れと?」
何か矛盾してませんか?ねえ。
…ん?そういえば。
「…あのさ、今何時?」
「今?4時前だけど」
確か体育は5時間目にあったから…2時間ぐらい寝てたのかな。
「…結構寝てたんだね」
「そりゃあ寝不足の上に倒れたんだから当たり前だろ」
「倉間部活は?」
「今日はねーよ」
「…まさか起きるまで待ってたの?」
「!」
私がそう聞くと、ふいと顔を逸らした。その居た堪れない時に目を逸らす癖、変わらないな。大抵こういう時は肯定という意味になっちゃうんだけど。私は思わずクスと微笑む。
「…何笑ってんだよ」
「べっつにー。倉間ー」
「何だよ」
「ありがとう」
何だかんだ言って、倉間は優しいから、今もそばに居てくれた事がとても嬉しくなった。そういや、保健室の先生の声がしない。あ、職員室か。
するといきなりガラッという音が響き、ここのベッドのカーテンが勢いよく開かれた。
「なまえー!具合どうー?」
「浜野くん、ここ保健室だから静かにしないと」
「浜野、速水」
「お前らうっせーよ!静かにしろ!」
「いや、倉間もね」
2人はベッドに近づいてきて、倉間の隣に並ぶ。私は上半身を起こして、2人に言う。
「もう大丈夫だよ。ありがとう」
「マジで心配したよ〜。倒れた時焦ったし」
「でも、顔色も大分良くなったみたいだし、一安心ですね」
「ご心配おかけしました」
そう笑って答えると、2人は目を合わせ、苦笑した。
「ちゅーか、一番取り乱してたのは倉間だったよなー」
「え?」
「ばっ」
「だって、なまえが倒れた途端、大きな声で名前をよんdぐふっ」
「お前それ以上言ったらぶん殴る」
「え?え?」
浜野が言ってる最中に、倉間が浜野の口を抑えたので、なんかよくわかんないまま終ってしまった。大声で…名前を呼んだって?じゃあ、意識が僅かにあったあの時、聞こえた声はやっぱり倉間だったのかな。
「ほら」
ぽいっと、いつも体育のジャージが入ってる袋を私に渡した。
そっか、まだジャージのままだった。
「お前の友達が、持ってきてくれたんだ。お礼言っとけよ」
「うん」
「んで、着替えたら帰るぞ」
「!…はーい」
少なからずとも、やっぱり心配してくれてたんだ。いや、迷惑はかけましたけどね。マジすみません。
私は着替える為三人をカーテンの外に出す。カーテンを閉めるとき、私は笑って倉間に言った。
「倉間。ありがとう」
言いたいことを言い終えて、私は静かにカーテンを閉めた。そして私は閉める直前にみた倉間の赤くなった顔に頬を緩めたのは、言うまでもない。
真夏も悪くない、かも
(倉間…完全フリーズしちゃいましたね)
(なまえすっげー)
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