エルの夢
□お日様の窓
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名前が分からないと言うと、ハギさんは少しだけ困った顔をしましたが、直ぐに微笑みかけてくれました。
「なら、先に皆と一緒にご飯を食べようね」
お腹空いたろ、とハギさんが言うので、少年はこくりと頷きました。
ですが、直ぐに首を傾げました。
「みんな?」
「そう、皆。私と、キシと。多分、君と同じくらいの歳の子が、三人いる」
そうなんだ、と少年は相槌を打ちました。
「少し癖は強いけど、きっとそのうち仲良くなれるさ。立てるかい?」
「はい」
ハギさんが手を貸してくれたので、少年はその手をとってベッドから立ち上がりました。
「あ、でも寝間着のままじゃ寒いか。着替えは…」
このままでも構わないと少年は言いましたが、ハギさんは首を横に振りました。
着替えを持ってくるから少しだけ待っていてくれと言われたので、少年はベッドの縁に座って待ちました。ハギさんは部屋を出ていきました。彼が後ろ手に閉め損なった部屋のドアが、きい、と鳴きます。
なんとなく、薄く開いたドアの隙間を見ていると。
ひょこり、と目玉が二つ、現れました。
突然のことに、流石に吃驚しましたが。
その目の正体は、恐らく少年よりも幼い子供のものであることが分かって、少年は肩の力を抜きました。緑色の目です。くりくりとしていて、鮮やかです。
「こんにちは」
声をかけると、子供はただでさえ大きな目をさらに大きく見開かせました。
「こんにちわ」
最初は、小鳥が囀ったのかと勘違いをしました。
正解は目の前の子供が挨拶を返してくれたのですが、あんまりに早口に言うので、正確には聞き取れませんでした。
なので少年が少し曖昧に微笑み返すと、緑色の目をした子供は、ぴゅっと風のように走り去ってしまいました。
と同時に、ハギさんが帰ってきました。
「ヒイラギが来ていたね」
「ヒイラギ?」
「さっき、ここにいた小さな子。まあ、また後で会えるよ」
ほら、とハギさんは着替えを少年に差し出してくれました。
着替え終えてから、少年はハギさんと部屋を出ました。廊下は思ったより長く、等間隔にドアが並んでいます。部屋はまだ幾つかあるようでした。