エルの夢

□天使の梯子
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気がついたら、知らない場所にいました。



 ―……あれ?
 ―………ここはどこだろう。

少年は、アメジストの様な目をぱちぱちと瞬かせました。

周りには木が沢山あります。太陽の光りを浴びて、きらきら輝いています。
雨が降っていたのかもしれないです。葉の上に乗った滴が反射して、いつか見たイルミネーションのようですが。人工の光とは違う。日の光を浴びて、緑色の木々を白く淡く辺りを包む光景は、どこか神秘的で神々しくもありました。

空を見上げると、雲が広がっています。
もしかしたら、本当にさっきまで雨が降っていたのかもしれません。雲は少し、厚いようです。
ですが所々、雲が切れ、天使の梯子が降りています。本当に天使が降りてきているようで、美しくありました。

足の裏を撫でる、背の低い草は湿っています。これが雨か霜かは分かりませんが、冷たくて気持ちが良いです。
少し、擽ったくもありましたが、少年はあまり気にしませんでした。

と、ここで気づきました。
少年は、裸足です。
こまったな、と思いました。

ここが何処だか分かりません。
自分は何故だか裸足です。
よくよく見ると、身形も随分と軽装です。遠出をするつもりはなかった、という印象を持ちます。
果たして、何故こんなことになっているのか。
考えてみても、何一つ思い出せません。何故でしょうか。分かりませんでした。

仕方がないので、歩いてみることにしてみました。
幸い。見る限り、地面に這う木の根以外、さわさわとした背の低い草がずっと群生しています。絨毯のように柔らかです。暫くは、足の裏も痛くならないでしょう。

少年は歩き出しました。
生来のものかもしれません。少年はあまり深く考えず、思うままに歩き始めました。
何一つ思い出せませんでしたが、いっそそれが幸いだったのかもしれません。どこへ向かおうと、失うものは無いのです。

どこか町へ着ければいいな。
そう考えながら、少年はぽてぽてと、進んでいきました。


 
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