エルの夢
□お日様の窓
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起きると、少年はあったかい布団で寝ていました。
しぱしぱと目を瞬かせながら、状況をどうにか整理したいと思います。
布団から顔を出しました。
カーテン越しでも分かるくらい、目一杯に明るい日の光が、窓の向こうから差し込んでいるのがよく分かりました。
きっともうお昼です。
少年はなんとなくそう思いました。
物凄く体が怠いですが、体を起こして、部屋を見渡しました。部屋には、今少年が寝ているベッドと、小さな机があります。机には、灯りの点いていないランタンが置いてありました。
部屋を見渡している内。
そうして漸くして、誰かさんのことを思い出しました。
楠で、誰かさんが少年をどこかへ連れて来たように思いますが。
「……んー、」
目を擦り、少年は少し唸る。
寝起きだからか、あまり頭が働きません。
そこでふと、袖の色が、覚えの無い色であることに気づきました。
あれ。
ぽそりと溢す。
と。
がちゃりと、音がしました。
「ん、起きてたかい?」
知らない声です。
音の方を見ると、金色の髪の人がいました。
「えっと、?」
「あ、大丈夫。怪し…い?かもしれないけど」
なにもしないよ、と彼は言いました。
多分、きっと何もしないのだろうと少年は思いました。
「そうだね。まずは自己紹介しよう。私はハギだ」
「ハギさん」
「それと。覚えてるかな。君を見付けて、運んできた、黒いの」
黒。多分あの人だろう。
覚えていたので、少年は頷きました。
「あれは、キシ」
「キシさん」
「そう」
良くできました、と。
ハギは少年の頭を撫でました。黒くて柔らかい髪なので、触り心地はきっと良かったです。
「それで。君は?」
きょとりと少年はハギさんを見上げました。
ハギさんの目は、ステンドグラスの様な、綺麗な日の光の色をしています。うろ覚えですが、キシさんの目の色も、こんな風にきらきらとした日の光の色をしていて綺麗でした。
と。
「………」
「?」
少年は気づきました。
「名前が、わかりません」
自分の名前が、思い出せずにいました。