薄桃色2
□体感温度ではなく心です
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どのくらいたったのだろうか。
敵は減るが状況は良くならない。
というのも、減りはするが次々に敵が増えるのだ。こちらはそれに応戦することで消耗が激しい。
ちらりと横を見やれば瑛利加が何やらまだぶつぶつつぶやいていた。
……………………………怖っ。
だが、迫り来る敵を舞うようになぎ倒す姿はとても綺麗だった。
あれは確かに"鬼"ではあるが僕等とは何か違う。きっとそれは花のように美しい戦闘スタイル、たまに見せる姿は儚いところなのだと思う。
「鬼花、か」
人は自分に無いものを求めると言うが、あながち間違いではないらしい。その時の瑛利加を見る薫の目は愛しいものを見る目だった。
「はぁ……はぁ」
顎に垂れてきた液体を拭う。汗か血かなど確認する暇など無い。いくら、戦闘能力がすぐれていてもそれはあくまで"人間"の中での話なのだ。仲間のあの2人はまだまだ余裕そうだ。瑛利加はぶつぶつ言うくらいには元気だ。まだ言ってたのかよ。
………………………きもっ
そんなことを思っていた。その時は疲れで鈍っていたのか、瑛利加の方を見てしまっていた。そう。よそ見をしてしまっていたのだ。だから気付いた時には自分に刃が振り下ろされていた。
「っ!!」
もう、ダメだなんて柄にもなく思っているとうめき声が聞こえる。
目を開けるとあいつが、瑛利加が得意げに立っていた。
『約束通り責任とったよ!』
「瑛利加……」
ありがとうとは性格上言えはしないが、そんなこともお見通しなのかにっこり微笑むと俺の腕を引く。
『ほら!まだ終わってないんだから立った立った!!早く帰って千鶴に美味しいお茶でもいれてもらおう!』
そう言って瑛利加はまた敵の方へ走って行った。
何かムカつくけど、
……心があったけーや。
「お、わった…」
僕は疲れのあまり息も絶え絶えになっていた。戦闘が終わって皆が脱力しているところだったので周りを見渡す。
「瑛利加?」
見渡してはいるが、見える範囲では瑛利加の姿は無い。
どうしたものかと疲れた身体に鞭打って歩いてみるが、なかなか見当たらない。
「沖田、瑛利加が居ないんだけど…」
たまたま見かけた座り崩れている沖田の元へ向かったが何か様子が変だった。背中しか見えていなかったが何かを抱えているような、それだ。声をかけながら前へ回ると抱えられていたのはずっと探していた瑛利加だった。
「え…どういうこと、なの?瑛利加どうしたの?ねぇ!沖田!!」
動揺を隠しきれずに沖田にたずねる。そんな僕の顔をゆっくりと生気の無い顔の沖田が見つめて涙を流しながら口を動かした。
それは酷く残酷でわかりやすい一言だった。
「瑛利加……息してないんでさぁ」