薄桃色2

□鬼と鬼で桜色
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敵をなぎ倒しているところまでは元気だった。いつも通りだったんだ。ただ頭に衝撃がきて、そこで私は息の仕方を忘れてしまった。




総悟の私を呼ぶ声が遠くなるのを聞きながら、意識はまどろみに消えていった。





すぅーっと意識が浮上して行くに連れて周りの音が聞こえ出す。話し声だ。だが何故だろう。一人の声しか聞こえない。




『……ん?』

いや、まてまてまてまて。この声ってさ、え?この声てさ!!!

『ちーちゃぁぁぁぁぁああん!!!』

「だまれ」


声の主は思った通り、風間千景その人だった。

まぁ、起き上がって抱きつきに行ったは良いが睨まれた。まぁ抱きつけたよ。だから満足だよ。泣いてないよ。


そこでふと気づいたのだが、何故私はここにいるのだろうか。と言うか、何故ご丁寧に布団まで用意してくれていて近くにちーちゃんが居たのだろうか。私の考えがわかったのかちーちゃんは私の腕の中で睨むのをやめ、ため息を着いた。




あ、何か腹立つ。



「お前は何も覚えていないのだな」

『え、えぇそりゃもう』

「川から流れて来たのだ。普段なら気になどかけないが、お前に少し気になるところがあってな。」

その言葉を聞いた途端に瑛利加は絶望的な顔になるとわなわなと震え出して口を開いた。

『はぁ?!川からこんにちは?!普通さ!!空から降ってくる、とか家の前に倒れてた!!とかじゃ無いの?!何、私って桃太郎なの?!一生お供なしだよ!!むしろ鬼ヶ島で楽しく暮らしてやるよ!』


瑛利加の意味がわからない言葉の羅列を完全に無視して居た千景だが、如何せん抱きつかれている故、叫ばれると耳が痛いので軽く押しのけた。が、瑛利加はそんなことどうでも良さげに疑問を口にする。


『で、私に気になるところがあったんでしょ?何?………はっ!まさか恋?!恋ですか?!全然良いですよ恋してやろーじゃないっ』

「気になる、と言っても本当に些細なことだ。」

『あれ?照れ隠しかな?それともわりとガチかな?』

「……お前は俺の、俺たちの同胞なのか?だが、何か違う気もするのだ」

このスルーのされようにわりとガチなのだと悟り、話を聞くことにした瑛利加はどう答えるべきか悩んだが心が決まったのか口を開く。


『正解でもあるし、間違いでもある、かな?まぁ、純血の鬼ではあるよ』

「では同胞と思っても良いのだな?」

『いいんじゃないかな!何だよーちーちゃん私と恋仲になりたいのー?仕方ないなーっっもう!』

瑛利加のふざけた態度に若干イラっとはきたものの、千景はより血の濃い子孫を残すのが目的なので美味しい話なので口角を上げた。そして、再び抱き付いてきていた瑛利加の腕を引き、顔を近付ける。

「何だ、積極的なのに案外初心(うぶ)なのだな」

未遂であったにしても今までこんな反応はされた事が無いので耐性がついていなかったので真っ赤になって固まってしまった瑛利加に意地悪く笑って頬に唇を落とした。



『きっきっきっ………きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!』


瑛利加は千景から飛び退いて頭から布団を被った。千景はというと、意外な反応に少し面白さを感じてしまい布団に近づくが瑛利加は一行に出て来る気配は無い。上から抱えてしまおうかとも思ったが中から『ヒィィイイ!!ごめんなさいぃぃぃいい!!』と聞こえたので取り敢えず辞める事にした。






目を覚ますと見慣れぬ天井。あ、そういえば私ちーちゃんとこ居るんだった。と思い出し、昨日の出来事まで鮮明に思い出した。

『いや、夢だ。ありゃ夢だわ、うん』

「何だ。変な夢でも見たのか?」

『いや、ちーちゃんが私にちゅーっと……て何、自然に抱き付いてるのぉぉぉぉおお?!』

「嬉しいのか?そうか、ならば昨日の続きでもするか?」

そんな事をまた唇を寄せながら言うので、今度は自分の口を手で覆った。

『いや、いいっす。マジで離して。お願い。イケメン爆発しろ。』

「強がるな。本当はもっと近づきたいのだろう?」

いやいやいや。何この子バカなの?アホなの?ジャイアンなの?いじめっ子なの?私のび太なの?

周りから見た瑛利加もこの千景と何ら変わらない事を本人は知らずに散々な言い様だ。


そんな折、千景はそう言えば、と瑛利加に何かを差し出す。受け取ってみると綺麗な桜色の簪だった。家の蔵で見つけたらしく、瑛利加に似合うだろうと結っている髪に射し込んで微笑む。


『あ、ありがとう…』

瑛利加のその言葉に満足気に頷くと頭を軽く撫でた。

まだ、出会って日も浅い瑛利加に何故ここまでしているかはあまり理解は出来なかったが、幸せを感じているのは確かだった。






しかし、ずっとこのままなら良いのになんて願いは叶うことはなかった。




「まだ寝ているのか?」
いつものように瑛利加を起こしに貸している部屋へ行き、戸を引くと瑛利加がいなかった。


いや、正確には居たのだが透けていた。


「瑛利加?!なっ何だ!何があった!!」

動揺している千景に瑛利加はあははと笑う。

『ごめんね〜実は私はこの世界の住人じゃないの。何かわかんないけどこっちに飛ばされちゃったみたいでさ〜お迎えみたい。』

ごめんね?ともう一度呟いてありがとうとほほえんだ。

儚くも美しく微笑んだのだ。
もう会えないと悟った瞬間に千景はきゅうっと胸が痛くなった。

「どうしたらまた会える…」

『うーん…それは私もわからない。でもさ、希望を捨てなきゃまた会えるよー!もし私の世界に来たなら真選組においで!私はそこにいるから!じゃあ元気でね!!』

それだけ言い残して瑛利加は跡形もなく消えた。







「瑛利加!!」

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