薄桃色2

□いや、アイドルじゃないっす。
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朝、屯所の門をくぐるといつもと違った。

いや、正確には知ってるしいつも通りの場所だ。ただ、違うのは



「やっとお会いできましたね!瑛利加さん!!!皆様!この方こそが以前の特集で人気を誇っていた謎の真選組のアイドル桜田瑛利加さんです!おはようございます!失礼ですが瑛利加さんですよね?」


結野アナとならびニュースの顔として有名な花野アナがカメラを引き連れ、マイクを私に向けているところだ。

『え、あの…ども』

何故だろう。すごく私の後ろから眩しい光を感じるのは。


「やはり貴女が噂の!!どうもお初にお目にかかります花野といいます。よろしくお願いしますね!」

『えっよろしくって何を?!』

驚く私に彼女は不思議そうな顔を向けて取材許可おりてますがお聞きになられませんでしたか?と聞いてくる。











聞いてねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええっ!!


後ろを振り返ってみるとすごく笑顔の近藤さんがいた。




あ、眩しかったのお前の笑顔か。



『はぁ。ま、いいんだけどね…でも取材っつったって何かある?密着するにしても特に何もしないよ?』


私が振り返るとにこっと人の良さそうな笑顔を浮かべて大丈夫ですと答えた。

「ありのままをおさえるために来ましたから!」






屯所に戻り、朝ごはんを食べる。もうそろそろあいつが来るはずだ。


「瑛利加ちゃん♪」
『やぁ総司くんよ元気かね』

まるで祖父と孫のような会話に聞こえはするが一応年の近いただの若者だ。

「おっと…貴方は瑛利加さんの彼氏さん、でしょうか?」

そこにさっきまで黙っていた花野アナが口を開く。

彼氏…総司が?…………………

『ぶほぉっ』

突然吹き出して笑い出した私に花野アナはあ、違うんですねと少し残念そうにしているときに総司はにこにこしていた。


そう。にこにこしていたのだ。


「瑛利加ちゃん何でそんなに笑ってるのかな?そんなに笑えるところ?僕は間違われて嬉しかったのにな〜」

『総ずぃ目が笑ってないよ、ねぇ。怖いよ?ねえってば…』

「ねぇそんなに可笑しい?僕はおかしくないと思うよ?喜んでいいんじゃない?」

『ゴメンナサイウレシイデス』

私たちのやりとりは聞こえた分ではリア充だが見てしまうとすごい修羅場だ。花野アナも途中から見て見ぬ振りを始めた。いや、助けろよ。

そんな時、視線の先に救世主が現れた。


『はじめちゃん!助けて!総司が!いじめてくる!!!』

私の声にため息をつきながらやって来た彼は本当に救世主様だ。メシア。まじメシア。

「また、ろくでもないことしているのか。お前たちもいい大人だろう?」

前言撤回。ただのおかん。

しばらくの説教のあと、花野アナにさっきの代わりにいいとこ見せようと稽古場に向かった。


この時間なら歳三あたりがいるだろう。いや、居てくれ。頼むから。もしくはマヨ。この2人が多分私と戦えて尚且つ面倒臭くない。はず。いや、面倒臭いけどな。


「ここが稽古場ですか〜!お?彼方の方は先客ですね。」

『よかったー!歳三〜稽古付き合ってー!実践!実践しよ!』

「お前は来てそうそう騒がしすぎだ。少しは黙れねぇのか…」

とか言いながらも竹刀を持って来てくれるあたり優しいと思う。詩集はあれだけど。

「いま何か貶したか?」
『ははは。滅相もない。さ!始めよう‼』
「お前嘘つくの下手だろ。」













「本当にかっこよかったです!!!こう!なんか女剣士!!て感じで!!!手に汗握るということも久々に味わいました!」



結論から言おう。花野アナめっちゃ可愛い。さっきまでの語彙力が一気に年相応のものになってしまっててめっちゃ可愛い。

「瑛利加さん!本当に今日はありがとうございました!!また機会があればよろしくお願いしますね!」

『あんなのでよければ!』

ではっと一礼をしながら帰っていく背中を見つめていると後ろからまた視線を感じた。


『何してるゴリか』
振り返ると涙を流す我らが局長がいた。

「何で俺のとこには来てくれなかったのぉ…」

『…………単純に用がなかったゴリ仕方ないゴリ』

「待ってたのにぃ…」

ずずっと鼻水をすすった大男に少しばかり微笑む。

「瑛利加ちゅわん?」

拗ねて膝を抱えていた近藤さんに視線を合わせて笑って見せた。
そのまますぐに瑛利加だけ立ち上がって歩き出す。



『さ!ごはんごはん!』









笑顔が私なり優しさです!

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