*シスコン症候群

□春がきた
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ガバっ――――




『なに、してんの?』



半ば飛び起きるようにベットから体を起こすと目の前にはこの男
白い肌にモデル顔負けの綺麗に整った顔、それに加えて頭良し、運動神経良しの一般的には完ぺきに見えるだろうこの男

しかし、人に欠点はあるもので・・・



白「残念、後ちょっとやったんに」




『キモイ!

勝手に私の部屋に入るなって何回言ったらわかるの!?』



白「せやかて遅刻するやろ、入学早々遅刻するつもりなんか?

それに大事な妹おいて学校なんて行けへんやろ?



この男の場合・・・重度のシスコンであることだ



『やめて!これ以上鳥肌立たせないで!!』



白「酷いな〜

俺はリンカと一緒に学校行くのが夢なだけやのに」


でも私はこんな兄が、男自体が苦手だ
何で苦手になったのかは覚えてない、気がついたら苦手な物第2位だった
ここで第1位でないのは突っ込まないでもらいたい




『夢は死んでから叶えなよ、取り合えず出てって!!』



白「照れ屋やなぁ、ほなお兄ちゃんは出てくからはよ着替えや」



ドアが閉まると同時に深いため息をついた、もそもそとベットから出るとクローゼットを開ける
衣紋掛けに掛けてある真新しい制服に腕を通した
スカートは短すぎず長すぎない程度に捲る、仕上げに前髪をピンでとめて私の制服スタイルは出来上がった



『さてと――――』



そう言って部屋にある窓を開けるとその隙間に体を滑らせる
私の部屋は2階なのでへまをすると大怪我になってしまいかねないが、13年生きて来て1度もないのでお手の物だ



『よし行くかな』



白「うんうん、行こ行こ。はよせな遅刻やで」



『うんうん・・・

な、な、な!?』



白「何でいるの?って言いたそうやな、俺はリンカのことなら何でもわかるんやで!なぜなら俺がリンカのお兄ちゃんだからや!」



『ちっ(意味不明だし・・・キモイし)』


1人で行くためにわざわざ窓から出たというのに、お兄ちゃんに私の考えが読まれていたことが何だか気に食わなかった







白「でもお兄ちゃん嬉しいでリンカが四天宝寺に入学してくれて」



『好きでしたんやない』



白「・・・せやな」



私はこの春受験した、受験したのは大阪の高校ではなく東京にあるエスカレーター式の一番校だ
レベルは高かったものの学力でひけをとっているわけではなかった
でも、合格者の中に私はいなかった
悔しいとは感じたけど涙はでてこなかった
あの時泣いたのは今も悲しそうな顔をしている兄だ




『バカじゃん、何でお兄ちゃんが暗くなるの』



白「俺はリンカと運命共同体なんや、リンカが悲しかったら俺も悲しいんや」



『意味分かんないし、別に私は・・・』



俯きながら吐く言葉はだんだん小さくなって聞こえなくなる



白「そやそや、お兄ちゃん部活あんねん。部室で待っとってな」



絶対嫌



白「リンカの薄情者ー!!」



『ちょっと!半径2メートル以内に入んないでよ!!』



謙「朝から騒がしいな白石」



後ろから自転車のベルを鳴らす音が聞こえた、ベルを鳴らした本人はお兄ちゃんの隣に来ると自転車から降りた

男・・・・
そう思っただけで無意識に距離をとってしまう


白「謙也、ずいぶん遅い登校やん」



謙「まぁな〜

ってお前が言えへんやろ!」



白「俺はええねんて、人が多いとリンカも嫌やろうし」



謙「はーん、お前に彼女ができたなんて聞いてへんけど?」



白「いやー、照れるわぁ〜」



『彼女じゃないから!なに嘘言ってんバカ兄貴!』



謙「なんや、ちゃうん?」



『ちゃう!!』



謙「ぶはっ!、なんや白石嫌われとらん?

冗談やって、リンカちゃんやろ?白石から嫌と言うほど聞かされとるで」



そう言ってはにかむように少年は笑った
その太陽みたいにキラキラ輝く笑顔に私はぽかんと口をあけたまま黙ってしまった



謙「ん?どないしたん、何でそんな離れたとこにおんねん」



白「こら謙也、これ以上リンカに近づくんやないわ!」



謙「あーはいはい。

ってヤバいで白石!ホンマに遅刻してまう!」



白「マジで!?しゃーないなぁ、リンカちょっと急ぐで?」



そう言ってさり気なく私の荷物を奪うと小走りに走りだす



『2メートル以内に入るなって言ってるのに・・・』


そんな可愛くないことをぼやきながら私も走り出す
走ると春の風が頬をかすめてくすぐったかった
 

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