贈り物小説
□報われない気持ちを覗いたら
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私は今、恋をしている。
「はぁ…今日も素敵…」
警察庁警備局公安課の後藤誠二さん。
署内にもファンが多く、KKM総選挙で2位という人気。
対する私は…というと…。
「交通局のただの婦警Aだもんなぁ…」
後藤さんに私の存在なんて知られているワケがない。
それでもいい。
彼を見られる事が、私の唯一の幸せなのだ。
そんな私は今日も、昼休みを利用して後藤さんの様子を見に行く。
近づく事すら許されないような異彩を放つ公安課…がある廊下から彼が姿を現すのをジッと待つ。
休憩にでも、外に出た時に見られたらラッキー。
そんな事をしなければ、本当に彼の姿は見られないのだ。
「あ…」
公安局の前にいるのは、後藤さんではなく警備課の一柳さん。
(最近よく見かけるなぁ…)
一柳さんと言えば、署内で知らない人間はいない。
彼は警視総監の息子で、KKM選挙で1位になったイケメン。
おまけにエリート。
ファンだらけなのだ。
(ま、私は断然後藤さん派だけど)
その一柳さんを最近よく見かける。
要人警護をしているのだから、絶対に忙しいはずなのに見かけるのはどうしたのだろうか。
「あっ、いけない!」
気付くと時間は昼休み終了5分前。
(憂鬱な午後の始まりだ…)
後藤さんを見る事が出来なかった日は午後の仕事が辛くなる。
(テンション上がらないなぁ…)
珈琲を飲み干し、自分に気合を入れた。