贈り物小説

メイキング!
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「おい、一柳。料理を教えろ」


突然言ってきたのは元同僚のすました野郎で。


「教えてもらうのになんだその言い草は。あ?後藤?」


「いいから教えろ」


絶対に俺に何かを聞くことすらしないコイツが俺を頼ってくるのはよっぽどの理由があるに違いない。


「なんで急に料理なんてするんだ」


「…別にいいだろ」



俺に隠し事か?上等じゃねーか。



「ふーん…で、何作る気なんだ?」


「…ケーキ」


「…は!?」


「ケーキを作りたいんだよ」



そっぽ向く後藤は耳まで赤く染まっていて、その照れ顔も可愛いだなんてことは一先ず置いといて。



「なんでケーキなんだよ。後藤、甘いものそんなに食わねーだろ」


「…俺が食べるんじゃない」


「ハッ…じゃあ誰が食べるんだよ?」


「叶実が…」


突然出てきた女の名前に俺の顔が顰める。


「あ?」


「叶実が誕生日なんだ。だからケーキでも作ってやろうと思って…」


「叶実って誰だ?」



まずはそこから説明を願いたい。

総理令嬢であるアイツに目もくれなかった後藤。

だから、俺の気持ちが通じていると思っていた。




「…別に、誰でもいいだろ。お前は作り方を教えればいいんだよ」


「断る」


「…なんだと?」


「そんなドコの馬の骨かわかんねーヤツに」


「…それ以上言ったらお前をココで殺す」


「…」


「…」


「…はぁ…わかったよ……」



結局、後藤の頼みとなると断れない俺は、ケーキの作り方を手とり足取り教えることにした。



(ん…この状況っておいしいんじゃね?)



「一柳…」


「後藤…」


「…い…」


「え…?」


「近いって言ってるんだ。さっさと離れろ」


「あ、悪ぃ…」



おいしいと思っていた状況も、シャイな後藤が相手だとなかなか上手くいかねーなと少しだけ苦笑する。





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