いただきもの小説
□スライムまん
1ページ/1ページ
「肉まん食べたい」
何となく発したその言葉に、「俺が作ってやるよ」と。
「え…?」キョトンとすれば、頭を軽く叩いて「肉まんくらいだったら、俺が作ってやるよ」と笑う。
「…でも、今食べたいんです」
普段は素直に頷く理都がやんわり断る。
「理都…?」少なからずショックで名前を呼べば、「いってきますね」と部屋を出ていった。
(昴さんに、スライムまんを見せなきゃ…!)そんな義務感に、とあるコンビニに入る。
「いらっしゃいませーって、理都ちゃん?!」
驚きの声をあげたのは、クラスメイト。
「スライムまん、一個下さい」
まるで初めてのおつかいを頼まれた子供のようだ。
「いつも一緒にいる…すば…すば…」
「昴さんに買うんだ」
クラスメイトの言葉を遮り嬉しそうに笑えば、
「ふーん?はじめてのおつかいで、一人でできるもん?」と。
「ち、違うよ!」
顔を赤くする理都に、彼女は思わずだきつき、「はいはい、大好きな昴さんのためね」と茶々をいれる。
「うー…」
「理都ちゃんは、なに食べるの?」
「肉まん」
即答すれば、勘のいい彼女は、「そういって出てきたんだ?ラブラブだね」と。
「ち、違うもん」
「はい、じゃあこれね」と袋にいれ渡すと、「何が希望ですか?って倒しかたをきくんだよ?」と言われて、素直に頷く。
「ありがとうございました」その言葉を背に感じながら、理都は自宅に急ぐ。
「さて、昴さんとやらは、どんな勘違いをするのかな」
そんなことを呟かれてると知らない理都は、勢いよくドアをあけ、「もどりました」と。
「あ、あぁ、お帰り」反応が薄いことに違和感を覚えながら、理都は袋をだす。
「何が希望ですか?」
「は?!」
何を言い出すのかとめを見開く昴に、理都は首をかしげて昴を見上げる。
「え…スライムを倒すんですよね?」
元ネタをよく知らない理都はクラスメイトの言われたことを、そのまま伝えると、昴は小さく舌打ちをして、理都を軽く抱き締める。
「すっ、昴さん?!」
「あんま、可愛いこというと、肉まんよりおいしくくっちまうぞ?」と。
ボン!と音がするのではないかと思うくらい真っ赤になる。
「さ、さめちゃいますよ」といいながら、俯く理都。
こうして、バカップルのスライムまん事件は終わった。