いただきもの小説
□苦悩する
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「はぁー」
息を吐けば、白くなる。
寒さに、身を震わせ前に視線を向ければ、自分の恋人が立ち止まり、空を見上げた。
キラキラと瞬く星たちに、何を願ったのだろう。
腕を掴み、手を繋ぎたい欲求に駆られながら、その後ろ姿を家に入るのを確認して踵を返し、携帯を取り出す。
「お帰り。暖かくしろよ」
『どうして一緒にいちゃダメなんですか…?』
恋人の言葉に、言葉をつまらせる。
「お前はなにも心配するな。俺がお前を守るから」
『…解りました』
その物わかりのよさが、お互いを苦しめる。
側にいれないのは少しだけ。自分にそう思い込ませて、
「じゃあまたな」
と電話を切る。
クリスマスが近づけば近づくほど、お互いの距離を遠くする。
『一緒にいたい』
そう言われればすぐにさらいにいくのに。
自分の立場と、世間体を考えれば何も出来ない。
「クリスマスなんて、早く終われ…!」
そう小さく呟いて、家路についた。