novel

□一度だけ。
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一度だけ見たことがある。
銀さんが泣きそうな顔で立ち尽くしているのを。

もう僕らは長い間一緒にいるのにあんな顔を見たのは初めてだった。
もう僕らは長い間一緒にいるのに…一緒にいるのに…
僕らは銀さんのこと何も知らないんだ。

だからあんな顔も初めてみた。


知りたいよ、あんたのこと。








いつも通り万事屋に行くと玄関前で神楽がムスッとした顔で定春と一緒に座っていた。
「どうしたの?」
そう声をかけると膨れっ面の神楽が口を開いた。 「銀ちゃん、私が起こしたら、いきなり怒りだしたアル。1人にしろって言ってきたアル」
なんでいきなり?と思いながらも
「何かしたんじゃないの?乗っかったとか」
そう言うと神楽の怒りは増して
「そんなことしないネ!このダメガネ!」
と新八に八つ当たりしてきた。
「はいはい。ったくいい大人がなんなんだか。入りますよー銀さん!」
ガラッとドアを開けて銀時の寝室へ行く。
「なぁに拗ねてるんですか。神楽ちゃんにあたるなんて恥ずかしくないんですか!まったく…」
そう言って銀時を見ると銀時は毛布はかけたまま、汗を流し座り込んでいた。しかも呼吸が荒い。いつもと様子があまりにも違うから心配になった。
「ど…どうしたんですか!?銀さん!」
そう言って銀時に近づこうとすると手で振り払われてしまった。
「大丈夫だから1人にしてくれ」
銀時がつぶやいた。
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