書籍
□口づけを
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「ねぇ、一くんは僕のことどう思ってるの?」
「どう…、とは」
総司と一緒に巡察の帰りを共にしている最中、いきなり問いかけられた質問の意味がわからず、俺は戸惑った。
「僕は一くんのことが好きだよ。世界で一番」
正直に言うと、俺も総司が好きだ。
しかし、友人関係としてではなく、恋愛対象として。
つまり、総司の言う好きとは別物。
でも長年一番の友人として連れ添ってきた総司にこんなことは言えず、俺は戸惑っていた。
「俺とて総司が好きだが…」
「…ふーん」
言葉を濁して返したのが気に触ったのか、総司は不機嫌な表情になり、それから屯所につくまでお互い口を開くことはなかった。
何度かこういう質問を投げ掛けられたことはあった。
よくあることだ。
親友の気持ちを確かめたくなる。誰にだってたまにはある。
どんなに信頼しあっていても、少しの不安が募れば気になってしまう。
…俺は、このままでいいのか。
総司は俺に気持ちをぶつけてきてくれるのに、俺は気持ちを隠したままで。
そう考え始めたら、俺の体は総司の部屋に向かっていた。