武将と少女とときどき団子
□願い
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朝の10時。
外では風が葉をなびかせる音と、小鳥のさえずりが絶えない。
町から離れているこの家は、車の音よりも、自然の音の方が多く聞こえる。
いつもなら静かで落ち着いた雰囲気のこの場所だが、今日は違った。
この家の主名前は、バタバタと駆け回り、旅行の準備に追われている。
それもそのはず。
何週間も前から計画をたて、道具を揃え、待ち構えていたのだから。
でも、気持ちが高ぶりすぎて用意を忘れていて、今に至る。
『えっと…メーク道具…衣装…着替え…財布…』
旅行用の大きな鞄に、名前は確認しながら物を入れていく。
待ちに待ったコスプレイベントが、明後日に控えている。
今日中に用意を済ませて、明日の朝には出なくてはならない。
気持ちが高ぶりすぎて用意をわすれるなんて、なんて失態…!
『解せぬ…』
と、一言呟いてみても、用意は終わらない。
紙に入れた物を書いてチェックしながら、用意を進める。
『お風呂セットー……はっ!!お菓子!!』
今までけだるそうに用意していた顔が、一気に変わる。
言うまでもなく、名前はお菓子大好き人間だ。
『お菓子は昨日買って置いたんだよねー。昨日の私グッジョブ!』
にやにやしながら、お菓子眺める姿は、ヤバいとしか言いようがない。
お菓子がなくては生きられない!とその言葉は名前の為にあるのではないだろうか。
ビニール袋を漁りながら、大量に買い込んだお菓子を選んでいく。
『チョコアソート、飴……あ!ちょろぎ!……あとはー…あ、チロルチョコめっちゃある。』
チロルチョコを小さな袋に仕舞いながら、ひとつ口に含む。
思わず緩んだ頬は、戻る気配をみせない。
『はぅ…幸せ…♪おっと、用意用意。』
用意が終わったのはそれから2時間後。
((お菓子の誘惑に勝てなかった))