短編、捧げ物

poisoning
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※現パロで薬物中毒な飛段






パリン、ガシャン。静寂の中に響き渡る耳障りな音は一気に俺を夢から現実へと叩き落とした。更に続けて聞こえるのは狂ったような奇声。慌てて音のする方へ行くと荒れ果てた室内は血の匂いで充満していた。その中でボンヤリと見えるのは虚ろな目をした銀髪の男。静かな部屋に相手の不規則な息遣いだけが響く。それはやがて何かに耐えられなくなったようにドサリ、音をたてて粉々のガラスが散らばる床へと倒れた。そんな部屋を荒らした張本人とも言える、目の前に横たわる男を見ると片手には中身の無い注射器。


ああ、少し目を離すとこれだ。なんて後悔をするも今更遅く、未だ注射器を握りしめたままピクリとも動かない飛段をジッと見つめる。白いを通り越して肌は死人のように青白く血だらけで、細かなガラスの破片はその肌に深々と刺さっている。体中はどこもかしこも傷だらけで、その中にはおびただしい程の注射痕も残っていた。



いつから飛段は壊れてしまったんだろう。なんで、どうしてこうなったんだ。なんて考えるだけ無駄だなと思った。今の時間から考えて、この薬の効果が切れるまでに残された時間は二時間半。時間が来たらまた同じ事の繰り返しだ。また叫び、傷だらけになり自ら体を蝕む行為をする飛段を見て。もう何も見たくない、知りたくもないなんて現実逃避をするも目の前の男がそれを阻止する。こんな奴、今すぐ警察に突き出すなりして見捨てればいい。でもそれができない、一人になれない自分がいて。なぜ離れられないのだろう、なんて未だ血生臭い部屋で考えるもすぐに自覚する。ああ、なんだ。理由は単純、俺もコイツに依存しているのか。






poisoning

(死んだ君へ愛のプレゼント)





230722




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