短編
□真夜中ラブソング
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※リーマンパロ
「エース、これが明日の資料だよい」
軽く手渡されたそれは予想以上に分厚く重くて、今日の残業をほぼ決定的にした。そんな俺のことなんてどこ吹く風やら、マルコの奴は飲みに行かないか?なんて誘ってくる始末で。
「そりゃ無理だ。誰かさんがいーいプレゼントをくれたからな」
「そりゃ悪い事しちまったみたいだな、じゃあ終わるまで俺も待ってるよい」
待ってるだけか。手伝えよ、とは言わなかった。こんな形といえマルコと二人きりなんて久しぶりで、柄にもなく浮かれているのが自分で分かった。顔に出てないのが不思議なくらいだ。
「ぐかー、ぐかー……」
前言撤回。一時間もしないうちに寝たこいつの頬を軽くつねってやるも、全く起きる気配はない。俺はハァ、と溜め息をついた。寝顔を盗み見るとこれまた端正な顔立ちをしていて。かっこいいじゃねーか、なんて不覚にも思ってしまった。
「少しくらい、いいよな……」
俺とマルコの二人しかいない空間で呟いた言葉を反芻させながら自分に言い聞かせる。しっかりと周囲を確認してから無防備な俺の大好きな人の唇に、ちゅうとリップ音と共に自分の唇を重ねた。
真夜中ラブソング
(愛のロマンチストは事務室にて)
230823