カカサス4

□びっこのウサギ
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◇びっこのウサギ◇





仕事が半ドンであまり食欲のない日は外でチ−ズバ−ガ−を買って帰った。
アパートの小さなリビングでサスケと二人チ−ズバ−ガ−を頬張った。
サスケはすでに、オレに早食いで勝てるなんて思っていない。チ−ズバ−ガ−のミ−トソ−スで顔を汚さないようにお行儀よく食べていたから、オレよりうんと遅れてしまった。
それでも食べ終えて「勝ったか?」とオレにたずねるサスケは負けず嫌いか。
眠たい目でサスケに微笑んだ。





「勝ったよ」
「誰に?」
「オレが実家で飼ってた猫に」
「ああ、人間でもないのか」
サスケは残念そうだったけど、うちはの子のサスケの美しい信頼の目が、オレの言う事が正しいのだと物語っている。
だからサスケ。オレはサスケにつまらない嘘をつけなかった。





オレ達は勉強しながらそれぞれのんびり午後を過ごした。
「実家では猫も飼っていたのか」とサスケがたずねた。オレは前にハトも飼っていた話をしたからだ。
ハトを飼っていたからオレはコ−ンフレ−クを食べないの。あんなのハトの餌じゃない。とサスケに笑った。
「結局全部でどれだけ飼っていたんだよ?」
「ん−?猫とハトとニワトリとウサギ?」
「なんでそんなに飼っていたんだよ?」
「食べるためさ」
しょせん町育ちのサスケはやはり引いた。





「オレはアカデミー一年のチビの時ニワトリに追いかけられた事がある」
とこわごわ話すのを細い目で笑った。
だけどうちはの子のサスケが怖かったのはニワトリに追いかけられた思い出だけで残酷な捕食者のオレを恐れていない。
あの頃動物達も食うためにオレが世話するのを柔順な美しい目で見ていた。うちはの子のサスケのように。
オレはしょせんその子達を殺してしまったけれど。





「だけどびっこのウサギがいてね。その子だけは好きで殺せなかったの」
「なぜ?」
「その子はオレの事を大好きだったからさ」
サスケはまるで知っているかのように美しい目で頷いた。
うちはの人達には好きだという理由はすべての理由になるのか。





「おいで?」と低い声で呼ぶとテーブルを立って素直にオレの前に座った。
抱きしめてサスケにくちづけたら、体重をかけられたサスケが苦しげな声を上げた。
思わずサスケを組み敷くと、テーブルの上の教科書がバサバサとすべり落ちた。
小さな屑籠も倒れてさっきのチ−ズバ−ガ−の店の紙袋が転がった。
サスケはわずかに暴力を恐れて、ぎゅっと身を縮めたけれど。





うちはの子のサスケに愛情はどんな屈辱も許せてしまうのか。
教科書が散乱して、ゴミが散らばってそんなでたらめな部屋で何をされてもサスケはわずかに身じろぐだけ。
苦しげな羞恥の表情を隠そうとする手を無理矢理引きはがそうとして、止めた。





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