カカサス4

□偏頭痛の夜
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◇偏頭痛の夜◇





エレベーターも付いていない古いアパートのコンクリートの階段を上がってズボンのポケットをさぐって、じゃらりとカカシの部屋の合鍵を取り出した。
吹き上げになっている階段の大きな窓からは外の陸橋を車が行き交っているのが見える。
ここは交通の要所なの。
気を付けて横断歩道を歩いて。
ここに住んでいた時カカシは口を酸っぱくしていっていた。
だからここに来る時オレは右折の車が突っ込んでこないか二度見してから渡っている。





サイドボードの引き出しを開けたらカカシの診察券がそこにちゃんとあった。
いつも診察券を忘れて駄目なカカシだ。
30を過ぎた頃からカカシは偏頭痛持ちになって市販の薬が一切効かなかった。
病院で処方される薬しか。





「ああ、ああ。頭痛くなってきた」
そういって急いで一錠何百円かする頓服を飲んでいた。
オレはここにいた頃カカシのおでこに貼ってやるシートを切らさずに買っていた。
それをこめかみに貼ってやってもカカシは苦しんだ。
「ああ、サスケ助けて〜」
オレはそのたびに「カカシを助けてくれ」と繰り返した。
カカシが哀れで。
カカシはしばらくうめいてから、嘘のように安らかに眠ってしまったけど、当時からオレはそれが何者の力か知っていた気がする。





オレとナルトは大学に入ってすぐ結婚が決まった。
早いほうだったと思う。
披露宴なんかやるお金はなくてただ家族や友達だけの小さなパーティーだったけど。
オレの妻は、オレが今でもカカシの世話を焼くのを責めなかった。
「サクラちゃんはな、知っているんだよ。おまえが、愛情深い男だって」
そうしたり顔でいつかナルトが話した事がある。
おまえが、サクラちゃんを決して捨てねぇって知っているんだよ。
オレは聞きながら笑った。
「どうしておまえにそんな事が解るんだよ?」
すると愚かなナルトは賢者のような目で答えるのだった。
「オレは、おまえをずっと見ている。一瞬も見逃さずに…。だからおまえの事は何でも解るんだってばよ」
そしてどこか遠くを見ながら一人ごちるのだった。
「…オレの息子にも。一瞬も見逃さず見ているつもりだが、おまえと違ってそれが通じているかどうか」





ナルトは昔から不思議な奴だった。
そのナルトにも手に負えない相手があるというのが、オレには可笑しかった。





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