カカサス4

□降るような
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◇降るような◇





クリスマスの夜はアカデミーのチビ共がサンタの格好をしてイルミネーションの中を練り歩いた。
オレとカカシはチビ共を護衛していた。
クリスマスは晴れて星が降るようだった。つまり寒かったんだ。
いつもの下忍の忍装束ではいられなくてオレ達はマントを着込んでいた。
「カカシ先生はサンタの格好をしないの?」
「オレはね、サンタよりナースさんが好きなの」
「うえー、キモーい」
「キモーい」
チビ共に罵られてカカシは笑っていた…





チビ共を帰して繁華街を歩きながらオレはナースさんというのはいわゆる風俗の女なんだろうと思った。
不思議と嫌悪感はなかった。カカシの事だからナースの女を優しく扱うんだろう。だからカカシはモテる。
ショーウィンドウに写る自分の姿を眺めてナースさんの格好をしたらカカシは喜ぶのかとふざけた事を考えてしまった。
どんな格好をしても中身はオレだ。
カカシが喜ぶ訳ねぇのに…
それでもオレは未練がましくナースさんの事ばかり考えた。
カカシがちょっとでも喜んでくれるならそれくらいの屈辱堪えてやる。
身がかあっと熱くなって、ううっとか唸りながら歩いていたからカカシが不審に思ったんだろう。
「どうしたの?」って声を掛けてきた。





「顔赤いよ」
「なんでもねぇ」
「オレがイメクラの話なんかしたから恥ずかしくなったの?」
思春期だもんねってオレの好きな男は見当違いの事をいった。
「サスケはオレの事、不潔だと思った?」
オレはあんたを汚ねぇと思った事はねぇ…
「ごめんね。寂しい独り者なんてこんなもんなのよ」
オレはあんたのような優しい男が独身でよかったと思ってしまった…
ほんとうに心細い事を思っていたのに、顔を真っ赤にしてカカシを睨んでいたんだ。カカシがふいにショーウィンドウに目を向けて、オレはほっとした。
そしたらその店にはピンクのナース服がディスプレイされていたんだ。





(あっ…)
それは淡いピンクで思ったより清楚な姿をしていた。
オレの好きな男が好きな服だと思ったら、つい目が釘付けになってしまった。
気がついたらショーウィンドウに手をつけてナース服に見とれていたんだ。





「欲しいの?」
ささやくようなカカシの声が降ってきた。
「買ってあげようか?」
「い、いらねぇっ!!」
オレは顔が熱くなってダッシュでその場を立ち去った…限界だった。
そのまま家まで突っ走ったら躓いてたまたまナルトに受けとめられた。
「どうしたんだよ?」
オレは堪らずに全部喋った…
すべてを聞いたらナルトが「ついて来いよ」ってオレの手を引いてまた夜の街へ連れ戻した…





ナース服を置いてあるショーウィンドウの灯に照らされてカカシは年寄りみたいに背中を丸めて座っていた…
「なっ、大人でも生意気に落ち込んだりするんだってばよ…」
「……」
ナルトは建物の陰からカカシを覗いてささやいていた…
それにしてもコイツはどうしてカカシがまだここに居ると解ったんだろう?
「話は聞いたけど今度のはサスケが悪いってばよ。あんまりガキっぽいってばよ。カカシ先生はばい菌扱いされたと思ってるってばよ」
「……」
「謝ってくればいいってばよ。大人は根に持っけど、馬鹿だから一言謝れば機嫌直すってばよ」
「なんでカカシの肩を持つんだよ…」
「オレはカカシ先生の味方じゃねぇ。サスケの味方だってばよ」
笑うナルトの真意をオレは計りかねた…





「なんでだよ、なんでカカシがまだここに居るって思ったんだよ。おまえ訳解んねぇ…」
「もしオレだったらサスケが戻ってきてくれるまで、ああやって待つからだ」





「カカシ先生はな、おまえを好きなんだってばよ」
父ちゃんとしてだけどな、ってくしゃっと笑った。それでオレは納得したんだ。
オレは生意気なガキであの人は大人なのになぜいつもあの人は優しかったのか。
カカシが喜ぶ訳ねぇって、オレが決める事じゃなくてカカシが決める事じゃねぇか。そんな事も気付かないほどオレはガキだったのにごめんよ。
あんたが親切にしてくれた事実だけが大事だったのに。
降るような優しさは始めから決まっていたんだ。オレはただそれを受けるだけでよかった。




FIN.
 

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