カカサス4

□可哀想な人
1ページ/2ページ

◇可哀想な人◇





年度末になってカカシの帰りが遅くなった。
カカシに買い物を頼めなくなった…ベーコンを買い忘れてはならない。
オレは冷蔵庫を覗いて切れそうなベーコンを見て今日こそは忘れずに買うのだと自分に言い聞かせた。





朝食のアジの干物とベーコンエッグ。それとヨーグルトとコーヒーを添えてやる。
カカシはのっそりと死にそうな顔で起きてきたけど、それでもテーブルの朝食を見ると「いただきます」とにっこりと手を合わせた。
年度末でも器用にアジの身を箸で取り分けてオレの茶碗にのせてくれた。
「オレのめしを食って回復したか?」とたずねたら、「六割回復したよ」と笑った。
いつもなら「十割回復した」というのにどれだけ疲れているんだ。
オレは十割回復して欲しかったのに。不満で「コーンフレークだったらどのくらい回復するんだ?」とたずねたらカカシはぺらぺらの指の隙間を作った。
死んじまうじゃないか…。オレは笑って機嫌を直すのだった。





「ごめんサスケ。四月からも早く帰れないかもしれない」
コーヒーを飲みながらくたびれた顔で話した。
「何かあったのか?」
「人身事故だよ」
「任務の怪我か?」
あんたは優しい上忍だな。
その人や家族の対応をしているんだな…オレはカカシの頭を撫でてやったけれどカカシは疲れた顔をしている。
「あんたは可哀想な奴なのか?」
思わずたずねてしまったけどカカシはふっと微笑んだ。
「オレは、可哀想な人じゃないよ。サスケと暮らしているもの」
「じゃあオレも可哀想じゃない。あんたと暮らしているから」
オレ達は寄り添ってしみじみと小さな幸せを確認するのだった。
うちはの事件があってオレはトラウマを抱えて幸せじゃないと密かに思っていたけど、本当は本当は。あんたと暮らして初めて幸せになったんじゃないかって思う。





アパートのとても小さい玄関にはオレの忍靴が下駄箱の上にちんまりと置いてある。
その四角い狭い玄関で毎朝行ってきますのキスをするのがオレ達の習わしだった。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ