カカサス4

□口寄せ
1ページ/2ページ

◇口寄せ◇





オレの身体は牢獄にいるがオレの本当の心は今もカカシとひっそり暮らしている。
戦争が終わって、やはりというかオレは投獄された。
腕の傷も完治していないのに拘束服を着せられた。
もしかしたら、これが元でオレは死ぬかもしれない。自然に死ぬことを上は期待しているのかもしれない。
腕にしみるひやりとした牢獄の冷気を覚悟していたのに牢獄の中は暖かいんだ。
今時の牢獄は進んでいるんだなぁと妙に感心した。





夜ガチャリとアパートの鍵を開けたら、リビングからカカシがすっ飛んできた。
まるで、いつもこんな風にすっ飛んできてくれていた勢いだ。
久し振りに見たあんたは今でもかっこいい大男だ。
「どうしたのサスケ?帰ってきてくれたの?里抜けしたんじゃないの?」
「いや、里抜けしたさ」
「オレの身体は、大蛇丸のところで修行している。ここにいるのはオレの心だ」
「サスケの分身だね?」
それでもいいよ。カカシはシクシク泣きながらオレを部屋に引き入れてくれた。キッチンにまとめられたゴミ袋を見ればこれが惣菜やカップめんの容器ばかりだ。
「ひでぇな。今時コンビニでチンするうどんもあるだろう?」
「あれ難しくてオレには作れないの」
そんなカカシがあんまり哀れでオレ達はキッチンで固く抱き合った。
チンするうどんも作れないあんたを棄てて行くことなんか始めからできなかった。





冷蔵庫にあった有り合わせの野菜でお味噌汁を作った。
「サスケのお味噌汁が飲めるなんてオレは幸せだね?」
リビングで浮き浮きとカカシはおしゃべりしてると思ったのに気がついたらわかめを入れる直前に味噌汁の椀が消えていた。
「こら、わかめ汁なのに何で持って行くんだよ?」
「お手伝いしたら怒られちゃった!」
拗ねるカカシが以前のままで可笑しかった。家事にうといのも全く以前と変わっていない。
ああ、こんなあんたをオレは棄てることができない。イタチへの復讐が済むまでオレの心はひっそりとこの部屋でカカシと暮らすだろう。
オレの身体はあんたを棄てたけどオレの心があんたを見棄てることはない。





「そういえば、ここを出て行く時おかずをタッパーに作り置きしてたろ?あれ、どうした?」
「あれは、安全なところにしまいました」とカカシが分別くさい子供のように答えた。
「安全なところって?冷凍庫か?」
「オレのお腹の中へ」
ああ、食っちまったんだなとオレは笑った。
そういえば、オレの身体がここを出て行ってから一月が経とうとしていた。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ