カカサス4

□びっこのウサギ
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ただ、自分の体液の匂いが教科書につくのをサスケは嫌がった。
「よくそんな本で勉強する気になるな」とたまには毒づいた。
オレはサスケのその匂いが好きだったから顔がにやけるのをただこらえていた。
黙って曖昧に笑っていた。
そんなオレをサスケは今も美しい目で見てくれる。





ナルトに実力で勝っているとすでに思っていない…
サスケはお行儀がよくて、テーブルの上にひろげた、下忍の評価を見ないけれど。





サスケの目の前で採点をしながら話した。
「ナルトの成績が上がったね。大した忍になるよ」
「もっと現実的な話をしろよ」
憎たらしいのは口先だけでサスケの美しい目はオレの話が真実なのだと物語っている。





「ナルトはサスケが好きだから強くなっただけだよ?」とオレが話すのを静かな美しい目で聞いていた。
そんなサスケはオレが飼っていたウサギの子みたい。
しょせん、けだものは弱った仲間を相手にしなくなりがちでオレのびっこのウサギの子も、その運命を甘んじて受け入れていた。
だけど、人間のオレの愛情だけは信じた…オレが世話をしに小屋に入ると、動かない足で嬉しそうに寄ってきた。
オレはその子がいじらしくて最後まで殺せなかった…サスケにそんな話をしたらさすがに叱られるだろう。





この世で、最も愛情深いといわれる、うちはの子のサスケはどんな屈辱も許せてしまうのに、その反面弱い自分を許しはしない…
持病のせいで作業効率が落ちているサスケに、ある時簡単な任務でナルトが「楽しも?」とねぎらった。
それを聞いて、オレは今度こそサスケがオレのアパートを出ていくのではないかと覚悟した。





今も、帰宅時にアパートに明かりが点いていないと、オレは心臓の辺りが冷たくなる…サスケがついにオレの部屋を出ていったんじゃないかって。
だけどアパートに近付いてよく見ると、うっすら玄関にだけ明かりが点いていた。





寝室のふすまを開けると、サスケがいつものように、おだやかに眠っているのだった…静かな美しい顔で。




FIN.
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