カカサス4

□口寄せ
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牢獄へナルトが面会にきてくれてさめざめと泣いた。
あいつは泣くと鼻をグスグス鳴らすから目隠しをされていても解るんだ。
「こんな寒いじめじめしたところに怪我人のサスケを置いたら死んじまうってばよ?」
そして監視の目を盗むようにひそひそ声で打ち明けた。
「待ってろ。こっそりガマ吉の食道の中に口寄せしてやるってばよ?」
オレは笑って断った。ここは暖かいんだ。オレは大丈夫だ。
「暖かいってそんなはずが…あれ?本当に暖かい?」
鉄格子から手を伸ばしてナルトが牢の空気に触れたようだ。
「なっ?今時の牢は進んでいるだろう?」
ナルトの不思議な青い目を感じた。
「ここはコンクリートの打ちっ放しだってばよ。朝晩の冷え込みと結露で囚人が何人も死んだってばよ?」
そしてさっきより性急なひそひそ声でささやいた。
「サスケ、おまえすでに誰かに口寄せされてるってばよ?」
「口寄せって…誰に?」





オレの身体は牢獄にいるがオレの本当の心は今もカカシとひっそり暮らしている。
ナルトの話にはっとして、リビングでテレビを見ているカカシを振り返った。
「ナルトが面会にきて話していた。オレはもう口寄せされているそうだ…」
「……」
「怒っているんじゃないぞ?」
カカシは今は火影だ。家事は今でも全くできないものの、オレが叱れる立場じゃないんだ。
オレは優しく諭したんだけどそれでもカカシは相変わらず分別くさい子供のような口振りでぼそぼそと答えた。
「サスケは、オレが安全なところへ隠しました」
「どこへ?」
「オレのお腹の中へ」





「大蝦蟇でもないあんたが?腹の中に?」
「サスケを助けたくて」





サスケはオレが安全なところへ隠しました。サスケを助けたくて。
考えてることはナルトと同レベルな訳だがオレが死ぬかもしれないと意識する前からあんたが助けようとしてくれたのがありがたかった。
命を粗末にしてごめんよ。あんたを裏切ってごめんよ。
「ほんとだよ…でもいいの。サスケは帰ってきてくれたから」
今はたった一本の腕でめそめそ泣くカカシの頭を撫でた。
もしオレが本当に殺されそうになったらカカシはオレをお腹に隠したままどこかへ逃げるんだろう。
今までオレの心があんたと暮らしてきたようにどこかでひっそりと暮らすんだろう。
そしてあんたはお手伝いをしてまたわかめを入れる前にお椀を持って行ってオレに叱られるんだろう。
あんたは「お手伝いしたら怒られちゃった!」と拗ねるだろう。そしてオレに笑われるだろう。
それもいいかと思った。




FIN.
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